2011夏ワークキャンプ報告
2011夏 鶴居 ワークキャンプ 報告



【期間】
8月23日(火)〜8月29日(月) 6泊7日

【受け入れ先】
(公財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
有田茂生チーフレンジャー
伊藤加奈レンジャー
牛田賢二レンジャー

【参加大学】
千葉大学、東京農業大学、京都大学、日本大学
(4大学4名)

【作業内容】
・冬期自然採食地の管理(3カ所)

【その他の活動】
・しゃべり場
・自然保護セミナー
・野外セミナー
・懇親会

【7日間の活動報告】
<1日目>
午後:集合、移動、買出し
   宿泊施設の使い方レクチャー

<2日目>
午前:オリエンテーション
   (今後のスケジュール、タンチョウと鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの保護活動について、作業内容について)
   自然採食地の視察
午後:自然採食地の管理
夜:しゃべり場

<3日目>
午前:冬期自然採食地の管理
午後:自然採食地の管理

<4日目>
午前:自然採食地の管理
午後:自然採食地の管理
夜:懇親会

<5日目>
午前:野外セミナー
午後:野外セミナー

<6日目>
午前:自然採食地の管理
午後:自然採食地の管理
夜:自然保護セミナー

<7日目>
午前:大掃除、全体振り返り


【作業の報告】
*タンチョウの冬期自然採食地の管理*

≪冬期自然採食地管理を行う背景≫
生息地の開発や乱獲によって絶滅寸前まで数が減ったタンチョウは、冬期の給餌活動や湿原の保護活動などによって、現在では一千羽を超えるまでに生息数が回復しました。
しかし、湿原の開発は今もなお進んでいます。さらに、湿原周辺の森林伐採などによって湧水が減り、冬でも凍らずに餌が採れる水辺が不足して、人工給餌に頼って生きているのが現状です。
今後はタンチョウが本来の生息環境で暮らしていけるような環境づくりが重要だと考え、日本野鳥の会では、冬の採餌環境を保全する活動に力を入れています。

冬期自然採食地・・・タンチョウが冬期、自然の中でエサの採れる場所。冬でも凍らず小魚や水生昆虫のいる湧水地や河川など。


≪作業内容≫
タンチョウが利用できるように、水辺のふちに繁茂した木や、河川内に倒れた木を伐採除去します。
また、タンチョウが水辺に入りやすく、危険があった場合は逃げられるように、水辺へ出入りできる空間をつくります。

今回作業するのは、鶴居村下雪裡地区の手塚農場内の水路と中雪裡地区の旧雪裡川です。

■手塚農場■
今回管理をした手塚農場にある水路は、2011年春のワークキャンプで、管理をすればタンチョウの自然採食地となるかどうか調査を行った場所です。


原野化した牧草地の明渠排水路脇に生えた樹木を伐採します。


「のこぎりで切ります!力がいります!」


休憩中。


「低木も忘れずに」


「水路脇の木がなくなりました!」

■旧雪裡川■


旧雪裡川ふちに生える樹木。
ここから川に降りることができる入り口をつくります。


水面に張り出したり倒れたりしている樹木。
タンチョウが通りやすいように枝をはらいます。


どんどん切ります。そして・・・


「入り口の完成です!」


「こちらもすっきりしました!」

≪成果≫
手塚農場では2本の水路を整備し、旧雪裡川では約250m整備を行い、幅5mほどの入り口を3か所つくりました。
約4日間かけて合計3か所の採食地を整備することができました!
実際にタンチョウが利用してくれたらうれしいです。


【その他の活動】
■オリエンテーション
(鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの自然保護活動について など)
実際に作業をする前に、まずは鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのタンチョウ保護の取り組みや今回行う作業についてのお話を聞きました。


説明をしていただいた後は実際に外へ。
ネイチャーセンター脇にある自然採食地の視察に行きました。



■しゃべり場
これから作業を共にする仲間がどのようなことに興味があるのか、また、大学ではどのような勉強をしているのか話し合いました。
「え、何それ!すごいなぁ」となる話や「やっぱアレはいいよね」となる話題があったり、いろいろな話が聞けました。

■自然保護セミナー
作業最終日となる6日目に自然保護の考え方についてみんなで話し合う場を設け、今回のワークキャンプで行った作業が自然保護ではどういう位置づけにあるのか確認しました。

■懇親会
タンチョウの保護活動を行っている方や調査を行っている方、地元の猟師さんなどにお越しいただき懇親会を行いました。
今回私たちが行った作業について話したり、皆さんがどのようなことをしているのかなどの話を聞きました。
立場は様々ですがタンチョウが住む地域で生活している皆さんの話にみんな興味津々でした。



■野外セミナー
「タンチョウが実際に利用している場所はどんなだろう」「どういうところが保護区なんだろう」
鶴居にやってきて話を聞き沸いてきた疑問や、作業を通して感じたことを目で見て、耳で聞いて知ることができるのが野外セミナーです。
タンチョウが棲む環境やその場所が今どういう状況にあるのか、タンチョウと人との間に生じてきた問題などについて、釧路湿原を1周しながら受け入れ先の方に解説していただきました。
また、道中にタンチョウ、キタキツネ、エゾシカを見ることができました。


「湿原散策です」


「ここに落ちてしまうこともあるのか」
タンチョウの転落事故が起こることがあるというスラリー
(家畜糞尿の貯蔵タンク)を上からのぞいてみました。


コッタロ展望台から釧路湿原を見ました。
天気がいいのでとてもきれいでした。


「タンチョウだ!」


「エゾシカだ!」


「ネコもいた!」

■参加者の感想■

日本大学生物資源学部2年 磯部恵利奈

今回、自然採食地の整備という作業がメインで、体力勝負という面が大きな割合を占めていましたが、普段、様々な場で働いている方々とお話しする機会もあり、いろいろな考えが生まれました。
タンチョウが生きる環境づくり、タンチョウとそこに住む人々の関わり、タンチョウを守るということがどういうことなのかイメージだけだったものが、この1週間で見たり聞いたり実際に作業してみて少しだけわかってきたと思います。
人間が利用しやすい道をとるのか、タンチョウにとって良い環境を守るのか、そこで対立関係にある時、自分はどの目的を持って進むべきなのかということは私の中でもっと考えていこうと思いました。
また、大学生のうちにもっと自分はどういう場で自然や動植物と関わっていくかを考え、そのために今回のようにいろいろな人とお話していくことで新たなものの見方ができるようにしたり、様々な知識を実際に体験することで得ていこうと考えました。
ただタンチョウが好きだし、北海道が好きだし、自然保護に興味があるというだけで今回参加しましたが、イメージしていたよりも違っていたことがあったり、ただきれいだと思って小さい頃に見たタンチョウを保護という面で見るという視点の違いは本当に勉強になりました。
今回得た考え方ややり方をまた違う機会に使えるよう自分の中でもっと消化していこうと思いました。

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