2010春ワークキャンプ報告
2010春 鶴居 ワークキャンプ 報告



■概要■
期間:3月7日(日)〜12日(金) 5泊6日
場所:北海道阿寒郡鶴居村中雪裡南
宿泊場所:鶴居村合宿研修所
受け入れ先:財団法人日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
       有田 茂夫  チーフレンジャー
       伊藤 加奈  レンジャー
       加藤 健太郎 インターンレンジャー

参加大学:東邦大学、東京農工大学、千葉大学、一橋大学、武蔵野大学(5大学7名)

チーフコーディネーター:東邦大学理学部生物学科3年 深澤真梨奈

主な作業内容:採餌量調査
       デントコーンづくり
       生き物調査
       自然採食地確認調査

そのほかの活動:自然保護の必要性セミナー
        野外セミナー
        合意形成セミナー
        懇親会


■6日間の活動内容■

<1日目>
午前:羽田空港出発
   釧路空港到着
午後:買出し
   オリエンテーション(有田さん)

<2日目>
午前:生き物調査(採取)
   採餌量調査(データ集計)
午後:採餌量調査(データ集計)
   採餌量調査(データ収集)
   デントコーンづくり

<3日目>
午前:ねぐら観察
   自然採食地確認調査
午後:自然採食地確認調査
 夜:自然保護の必要性セミナー

<4日目>
午前:野外セミナー
午後:野外セミナー
 夜:合意形成セミナー

<5日目>
午前:生き物調査(採取)
午後:生き物調査(分類作業)
 夜:懇親会

<6日目>
午前:合宿所掃除
   ワークキャンプ全体振り返り

■作業の成果■
―調査の背景―
サンクチュアリでは、タンチョウの餌が少なくなる冬期に、個体数維持のため給餌を行っています。しかし、今後人間の都合により給餌ができなくなったとき一気に数が減少してしまう恐れがあります。また、給餌場にタンチョウが集中することで、疫病などがはやった時に一気に絶滅してしまう恐れもあり、またその集中により、交通事故や農作物の被害など、地域住民との接触トラブルも発生しています。その為サンクチュアリでは、タンチョウを自然にある採食地で採食できるよう、自然採食地の整備作業を進めています。また、給餌量の調整を行って、自然採食地へタンチョウを促す取り組みも行っています。今回の作業はそんな背景のもと行いました。

≪採餌量調査≫
<目的>
採餌量を調べ、今後の給餌量の調整の参考とする
<方法>
@朝、給餌を行なった直後と、夕方のタンチョウがねぐらへ帰った後の2回、給餌場に1m×1mの方形区を設置し、その写真を撮る。これを直線状に30mの地点まで、合計3本の写真を撮る。
A写真に写った給餌コーンの粒の数を数える。
B朝のコーン数から夕方のコーン数を引き、採餌量を出し、集計、グラフなどにまとめ考察する。

<成果>
2009年11月〜2010年2月までのデータを集計、グラフにまとめて傾向を分析しました。また、5日目の懇親会にて集計結果を発表しました。



「写真の中のコーンを数えます」



「集計してグラフにします。縦軸は給餌量と採餌量で…」



「夕方には方形区を置いて写真を撮ります」

≪デントコーンづくり≫
<目的>
タンチョウの餌が少なくなる冬季、越冬できるように給餌を行う。

<成果>
タンチョウコミュニティから頂いたデントコーンの一部をもいで、給餌できる状態にしました。



「手でコーンをもぎ取ります」



「機械でも一気にもぎ取ります」

≪生き物調査≫
<目的>
自然採食地と整備した自然採食地にどんな生き物がいるかを調べ、今後の自然採食地の整備に生かす。

<方法>
@去年整備した自然採食地と、旧河川や牧草地脇の排水路に元々ある自然採食地の3か所において、河床の生物を木片や石ごと採取し持ち帰ります。また、周りの環境を記録します。
A持ち帰ったサンプルから生き物を取り出し、環境ごとにわけます。
B生き物を図鑑などで調べ、分類します。

<成果>
予定した3か所のうち1か所は、前日の吹雪の影響で生き物を採取することができませんでした。
他2か所は採取して持ち帰り、生き物を取り出しました。分類まではできませんでしたが、多くの水生昆虫や貝類を確認することができました。
また、給餌場わきの自然採食地では生き物の数が少なかったことも確認できました。



「スノーシューを履いて自然採食地へ!」



「生き物がいそうなところはどこだろう」



「河床の泥をふるいにかけて持ち帰ります」



「合宿所にてひたすら生き物探し…」

≪自然採食地確認調査≫
<目的>
タンチョウの、自然採食地の利用状況を確認し、今後の保全に役立てる

<方法>
@何ヵ所かの見晴らしの良い場所に移動します。
A双眼鏡や望遠鏡を用いて、タンチョウが何羽、どこにいて、何をしているか、どこに飛んだか、などの行動を追い、記録する。
B夕方まで続けたら集合し、調査結果を報告してまとめます。

<成果>
タンチョウの1日の行動を追うことができました。また、どの場所を自然採食地として利用しているのかを、最近新たに見つけた所も含め確認することができました。



「望遠鏡でタンチョウを追跡!」



「みんなで報告!この記録はそっちの記録と同じ個体かな」

■その他の活動

□3日目
≪自然保護の必要性セミナー≫
 自然保護はなぜ必要なのか、みんなで話し合いました。その後、受け入れ先の方の考えを聞いたり、自分たちの考えを言ったりしてお互いの思いを聞きました。

□4日目
≪野外セミナー≫
受け入れ先の方に鶴居近辺を案内していただきながら、サンクチュアリ以外の給餌場や牧草地、排水路などでタンチョウの現状と問題、住民との軋轢の解説や野生生物保護センターや郷土資料館などでタンチョウをとりまく自然環境について解説をしていただきました。



「タンチョウを改めてじっくり観察…」



「皆真剣に聴いています」



「郷土資料館にて…」

≪合意形成セミナー≫
 鶴居村をモデルにタンチョウ保護の側の人と地元民、そして一般の観光客の立場に分かれ、合意形成を疑似体験し、合意形成の難しさや大切さについて考えました。
 その後は受け入れ先の方を交えて、実際はどんなやりとりがあるのか、大変だった話などを聞いたりしました。

□5日目
≪懇親会≫
 タンチョウの保護研究グループの方や写真家、地元の酪農家などをお招きしていろいろな話をしていただきました。
 また、採餌量調査で集計しまとめた結果を報告して、懇親会参加者に意見を逆に求めたり、議論をしました。

□6日目
≪ワークキャンプ全体振り返り≫
 ワークキャンプ全体を振り返って、各自どんなことを思ったか、今後どうしたいかを発表しました。



「懇親会にて…」

■参加者の感想■

武蔵野大学2年 清水美樹

 鶴居ワークキャンプは短い期間でしたが、発見に満ちた6日間でした。作業を通じてタンチョウの気持ちになって考え、日を追うごとに身近に感じ、愛着が湧いてくる、そんな毎日がとても刺激的でした。保護活動は地道の繰り返しであり、タンチョウを守ろうという強い気持ちが継がれてきた凄さ、懇親会でお聞きしたお話等、ここでしか学べない貴重な経験をさせて頂きました。レンジャーの皆様、地域の皆様、本当に有難うございました。


東京農工大学1年 石江彬


 2009夏鶴居WCに参加し、冬の鶴居も体験したいと思ったので今回のWCに参加しました。
 夏につくった水路も冬は全く違って見えることや、他の多くの場所でも水路が凍っていることがわかりました。給餌に頼らずに多くのタンチョウが道東で越冬するのは難しいことではないかと思いました。タンチョウはもともと渡りをする鳥だと聞きましたし、越冬には冬でも川が凍らないような気候の場所へ移動する必要があると思います。
 難しいこととは思いますが、人の生活に頼らないタンチョウを目指すことは、本州へ渡りをするタンチョウを目指すことではないかと思いました。


■ワークキャンプを終えて■

東邦大学3年 深澤真梨奈(チーフコーディネーター)


 ワークキャンプって何なんだろう。
 チーフでありながら、ずっとそんな疑問を持っていました。

 これまで何度かワークキャンプに参加していますが、どれも違ったものでした。今回は自然保護に対して熱い思いを持っている人から全く興味がない人まで、本当にいろんな人がいました。よくこれで自然保護ワークキャンプができるもんだと思いましたが、共通しているのは、皆が真剣に、現場の為に役に立ちたい、と思っていることです。

 自分の考える自然保護について、またはとにかく人の役に立つことをしたいという思い、今はいろんなものや自然を見たいなど。ワークキャンプは何も自然保護したい人だけでやる必要はない、と改めて感じました。もちろん、自然保護の最前線を自分の目で見て、机上だけでは学べない
 ことを自分のものにできます。でも大切なのは、何かに対して真剣に、主体的に考えてみる、ということなのだな、とつくづく感じました。

 だからこそ、みんなそれぞれの切り口で物事をみて、考えて、実に様々な意見がでてきます。ワークキャンプの大きな魅力のひとつですね。

 次行く時は、どんな人に出会えるのだろう!そしてどんなことを感じているのだろう!考えるだけでわくわくしてきます。

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