2010春ワークキャンプ報告
2010春 キナシベツ ワークキャンプ 報告



■概要■
期間:2010年2月12日(金)〜21日(月) 9泊10日
場所:北海道釧路市音別町 キナシベツ自然保護地区
受け入れ先:「キナシベツ湿原を愛する会」榊原 源士さん、森田 健吾さん

参加大学:東邦大学、日本大学、東京農業大学、帝京科学大学、中央大学(5大学7名)

チーフコーディネーター:東邦大学理学部生物学科3年 大原みさと

主な作業内容:
  キナシベツ自然保護地区に設置する看板作製
  キナシベツの自然保護年表作製
  アオサギコロニー調査
  自然誌調査
  オオワシ・オジロワシ調査

そのほかの活動:
  きくセミナー
  ナイトハイク
  自然保護の三本柱セミナー
  ワシタカセミナー
  キナシベツの今後セミナー
  野外セミナー
  懇親会

■10日間の活動内容■

<1日目>
午前:羽田空港出発
  釧路空港到着
午後:買出し
  オリエンテーション(榊原さん)
 夜:榊原さんのキナシベツ自然保護トークタイム

<2日目>
午前:看板作製(木材切り出し)
午後:看板作製(木材切り出し)
 夜:きくセミナー

<3日目>
午前:野外セミナー
午後:野外セミナー
 夜:フリータイム

<4日目>
午前:看板作製(木材組立)
午後:看板作製(図案決め)
 夜:ナイトハイク

<5日目>
午前:アオサギコロニー調査
午後:アオサギ研究者松永さんによるアオサギレクチャー
 夜:フリータイム

<6日目>
午前:看板作製(色塗り)、年表作製
午後:看板作製(色塗り)、年表作製
 夜:自然保護三本柱セミナー

<7日目>
午前:自然誌調査
午後:自然誌調査
 夜:フリータイム

<8日目>
午前:看板作製(色塗り)、年表作製
午後:看板作製、年表作製
 夜:懇親会

<9日目>
午前:フィールドトリップ
午後:フィールドトリップ
 夜:ワシタカセミナー
  キナシベツの今後セミナー

<10日目>
午前:オオワシ・オジロワシ調査
午後:オオワシ・オジロワシ調査
  ワークキャンプ全体振り返り

■作業の成果■

●キナシベツ自然保護地区に設置する看板作製

<目的>
現在キナシベツは貴重な自然があるにも関わらず法の網がかかっていない、非常に不安定な場所です。そのため、キナシベツを守っている人間がいるということを常に地元の人に伝えていく必要があります。伝えることで、ここは守らなくてはいけない場所だということを認識してもらうことができるからです。
今回、私たちはField Assistant Networkとしてキナシベツの自然を守るお手伝いをしているということを広く伝えるための看板を作りました。

<方法>
@野外セミナーで見た自然をもとに、看板の図案を決めます
A木材の切り出しから始まり、カンナをかけ滑らかにしたのち、それらを組立てていきます
B図案をもとに、色塗りをして完成!!

<成果>
180cm×120cmのとても大きな看板ができあがりました!!
できた看板は、夏のワークキャンプで設置します。



「木材にカンナをかけて綺麗にします!」



「組立ます!」



「慎重かつ大胆に色を塗ります!」



「みんなの力が合わさって完成!」

●キナシベツの自然保護年表作製

<目的>
キナシベツの自然保護の歴史を、受け入れ先の榊原さんから聞き、それを今後トラストの家に訪れる人にも見てもらえるように年表を作りました。

<成果>
キナシベツの長い歴史を、見やすくまとめることができました!!
トラストの家に来ると見ることができます。



「どんなデザインにしようか…。」



「立派な年表が完成しました。」

●自然誌調査

<目的>
キナシベツ自然保護地区内の原生林(一度も人の手が入っていない林)の中は、地形や植生などまだわかっていない部分がたくさんあります。そのため、FAワークキャンプで2005年から原生林内の様子を調査してきました。

<方法>
@地形図(正確ではない)を頼りに、かんじきを履き雪の中を歩きます。
A生えている巨木や、林の様子、地形等を地図に書き込んでいきます。
B2005年からまとめてきた地図に書き込みます。

<成果>
深い雪の中を歩き、巨木等を地図に落として行きました。
途中高さ30m以上の木を見たり、オジロワシの巣を発見しました。



「こんなに急な崖を登るんです!」



「木の上にオジロワシの巣を発見!」

●アオサギコロニー調査

<目的>
環境の指標(環境がどのように変化しているのかをみるための基準となるもの)となるアオサギの巣の調査を行うことで、キナシベツの自然の状態を見るためです。
2005年から始まり今年で12年目になる継続的な調査です。

<方法>
@昨年のデータをもとに、アオサギの巣があるカラマツを探します。
Aその木の、直径・健全度・巣のアルorナシ・巣のある高さ・巣の直径を計測します。
B新たに巣が見つかった場合は、その木にナンバリングします。

<成果>
アオサギの巣は、昨年度より2つ減って88個見つかりました。



「木の高さを計測中!」



「アオサギの巣はこんなに大きいんです!!」

●オオワシ・オジロワシ調査

<目的>
鉛中毒等で減少しているオオワシ・オジロワシの個体数、分布状況を把握するため、道東全域で毎年調査が行われています。
今回私たちは、キナシベツ近辺の地域にいるオオワシ・オジロワシを中心とした猛禽類の調査のお手伝いをしました。

<方法>
決まっているルートを一定の時間で周り、それぞれのポイントで観察できた猛禽類の種類・個体数・成熟度・性別を記録用紙に記録します。

<成果>
今年は昨年より多い14羽のオオワシ、オジロワシが観察されました。



「遠くに飛んでいるのは、オジロワシ?!」



「たくさんのポイントを周り調査しました」

■その他の活動

□1日目
●榊原さんのトークタイム
 キナシベツの自然保護の歴史をいちから学ぶことができました。また、榊原さんがどういうきっかけで自然保護に関わろうと思ったのか、今後どのように保護していきたいかなど、熱い想いをたくさんきくことができました。

□2日目 
●きくセミナー
 きくこととはどういうことか、ということを実際に話したりきいたりすることを通して学ぶことができました。 

□3日目
●野外セミナー
 歩くスキーを履いてキナシベツ自然保護地区を一周しました。凍っている川や、夏には入れない湿原、キナシベツを一望できる岬、原生林等を榊原さんの説明のもと1日かけて体感しました。



「凍った川の上をスキーで滑るのはここでしかできない体験です!」



□4日目
●ナイトハイク
 明かりが全くないキナシベツの夜を、体感しました。満点の星の下、海の音を聞いたり、静かさを感じたりと普段なかなかできない体験をしました。



「今まで見たことない数の満天の星!!」

□5日目
●アオサギレクチャー
 長年北海道でアオサギの研究をされている松永さんより、アオサギの詳しい生態等を教えていただきました。調査をしたアオサギが非常に身近に感じることができました。

□6日目
●自然保護の三本柱セミナー
 キナシベツに近い自然保護の現場を想定し、どうやったら自然を守ることができるのかということを話しあうことができました。



「頭をフルに使って話し合います。」

□8日目
●懇親会
 キナシベツに関わっている地元の方がお越しになり、キナシベツに対する想い等を私たちに聞かせてくれました。夜遅くまで、たくさん話をして下さりとても充実した夜になりました。

□9日目
●ワシタカセミナー
 10日目に行われるオオワシ・オジロワシ調査に向けて事前勉強を行いました。減少の原因となっている鉛中毒のことや、ワシタカの識別など実践的な知識を身につけることができました。

●キナシベツの今後セミナー
 ここまで見たり、学んできたことをもとに、キナシベツの自然保護を今後どのようにしていくことができるかということを話しあいました。
ワークキャンプが始まる前には、考えなかったようなアイデアや想いを互いに交換し合うことができました。

□10日目
●ワークキャンプ全体振り返り
 10日間のワークキャンプを過ごして、得たことや感じたことを作文にして発表しました。ワークキャンプを通して自分の考えを見直したり、新たな考えを得た人など皆それぞれ想いを語りあいました。

■参加者の感想■

中央大学4年 横井今日子

 10日間を振り返ってみて、一番印象に残っていることは年表作りだ。なぜならば制作当初、どのように作ったらいいのか、また、そもそもなぜ作らなければならないのかわかっていなかったからだ。だから、最初はみんなの雰囲気をみて、流れで作っている自分がいた。そんな自分が主体的に制作活動に取り組もうという気持ちになったきっかけは、榊原さんの「将来キナシベツの歴史を人々に伝えることがしたい」といった熱い話と、初日の日誌に書いてあったチーフの「何かを残していきたい」というメッセージだった。
 自分も、その言葉の意味を完全に理解し、同じ想いになれたかはわからないけれど、何か次の人たちにも、自分の痕跡を残せたらよいと、考え始めた。それからは、制作活動にも力が入り、何か物事に取り組む時には、自分で何か目標や考えを持つことの必要性・大切さを、改めて理解できた気がする。
 自分もこれから先、人の心を動かせるような考えや、想いを持って、生きていきたい。


帝京科学大学1年 佐藤彩華


 私は10日間、北海道キナシベツにて、ワークキャンプに参加してきました。自然と動物が好きで、「何か自分にできることはないだろうか。」「何か活動したい。」という思いから、参加を決意しました。初めてのワークキャンプで、初対面の人達と同じ宿舎で寝食を共にすることになるため、行くまでは不安でいっぱいでした。しかし、参加メンバーとは年齢も近く、同じ興味を持って集まったという事もあり、すぐに打ち解けることが出来ました。受け入れ先の方々も優しく親切で、年齢や経歴に関係なく同じ目線で接してくださり、とても安心しました。
 キナシベツでの作業は全て肉体労働、体力勝負でした。体力には自信があったものの、厳しい寒さと雪に足をとられての作業は想像以上に過酷でした。そんな中で、北海道の厳しいけれど美しい自然は静かな感動と「ずっとこの景色を残していきたい!」という強い思いを与えてくれました。
 セミナーでは皆それぞれの熱い想いをぶつけ合い、終わった後も夜中まで討論を交わしたりと本当に濃い時間を過ごせました。他の人の意見を聞くことで私の考えの至らないことに気がつけたり、様々な観点から物事を考える事ができ、勉強になりました。
 今回の10日間は、自分を見つめ直す良い機会となりました。自分の本当に目指す道は何なのか、どういう想いでこういう活動をしているのか…。

 何よりもここで得られた経験、尊敬できる仲間との出会いは私の大きな財産です。これからも自分に出来そうなこと、興味のあることに積極的にチャレンジしていきたいと思っています。本当にありがとうございました。


■ワークキャンプを終えて■

東邦大学3年 大原みさと(チーフコーディネーター)


 「実際に会って話を聞かないとわからない!!」

 それが、キナシベツワークキャンプを終えて一番感じたことです。
 実際に現場に行って、キナシベツの自然を肌で体感して、受けれ先の榊原さんや森田さんの話を伺っていると、行く前に聞いていたことの100倍以上もの想いや知識を聞くことができました。榊原さんの考えは日々進化しているし、キナシベツの自然保護の状態も日々変化している。人伝いでは語りきれないような、雰囲気や、言葉の一言一言にこめられているものも感じることができました。そういったことを、直接自分の耳で聞いて、分からないことはとことん議論をして、初めて自分の中にスッと入ってきた気がします。

 もちろん、現場に行った人の話を聞くことも大切だし、授業やセミナー等で知識を得ることも重要なことだと思います。しかし、本当に身になることは自分の目で見て、自分の耳で聞いたことなのだと感じました。現場の人の生の声を聞かないで、聞いた話だけでその土地やその土地の想いを評価することは、とてももったいないと思います。
 だから、自然や自然保護に少しでも興味があって、でも何かもっとしっかりとしたものが欲しいと思ったら、是非キナシベツワークキャンプに来てほしいです!!キナシベツは現場の人との距離が、とても近いワークキャンプ地です。自分の想い、疑問をぶつけることができるし、現場の人の熱い想い、考えも聞くことができます。

 きっと、何か得るものがあると私は思います。




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