2009夏ウトナイ湖 ワークキャンプ 報告
■概要■
期間:8月20日(木)〜25日(火) 5泊6日
場所:北海道苫小牧市 ウトナイ湖
受け入れ先:(財)日本野鳥の会 ウトナイ湖サンクチュアリ
原田修(はらだおさむ)チーフレンジャー
中村聡(なかむらさとし)レンジャー
杉田福松(すぎたふくまつ)レンジャー
篠原詩織(しのはらしおり)レンジャー
参加大学:東邦大学、帝京科学大学、目白大学、東京農業大学、東京農工大学、日本獣医生命科学大学(6大学8名)
チーフコーディネーター:東邦大学理学部生物学科3年 大原みさと
作業内容:
オオアワダチソウ(外来植物)の分布調査
市民参加のオオアワダチソウの抜き取りイベント
そのほかの活動:
きくセミナー
合意形成セミナー
ウトナイ湖とラムサール条約セミナー
自然保護セミナー
自分発見セミナー
野外セミナー
野外セミナー振り返り
懇親会
■6日間の活動内容■
<0日目>
午後:フェリー(大洗港)出航
夜:きくセミナー
<1日目>
午前:合意形成セミナー、自然保護準備セミナー
午後:フェリー(苫小牧港)到着、買出し、サンクチュアリでオリエンテーション
夜:ウトナイ湖とラムサール条約についてのセミナー(原田チーフレンジャーによる)
<2日目>
午前:ウトナイ湖岸でオオアワダチソウの分布調査
午後:ウトナイ湖岸でオオアワダチソウの分布調査
夜:フリータイム
<3日目>
午前:ウトナイ湖岸でオオアワダチソウの分布調査
午後:ウトナイ湖岸でオオアワダチソウの分布調査
夜:自分発見セミナー
<4日目>
午前:市民参加のオオアワダチソウ抜きとり調査
午後:野外セミナー(美々川源流〜野生鳥獣保護センター)
夜:懇親会
<5日目>
午前:ウトナイ湖岸でオオアワダチソウの分布調査
午後:野外セミナー(苫小牧東部開発工業地域)
夜:野外セミナー振り返り
自然保護セミナー
■作業の成果■
●オオアワダチソウ(外来植物)の分布調査
<目的>
外来植物であるオオアワダチソウは、根から他の植物を弱らせる物質を出すなど、元々ウトナイ湖に生えている貴重な植物達にとって脅威の存在となっています。
しかしどの範囲に、どの程度の量オオアワダチソウが生育しているのか詳しくはわからないため、今回大規模な調査を行うことにしました。調査をすることにより、今後どのような対策をとればいいのか具体的に考えることができます。
今回は、同じく外来植物であるユウゼンギクも同様に調査しました。
<方法>
50m間隔で設置された38本のライン(70m)に沿って、オオアワダチソウ、セイタカアワダチソウ、ユウゼンギクがどの程度生えているのかを1mごとに区切って調べ、記録していきました。
<成果>
全部のラインを終わらせることはできませんでしたが、27本のラインを調査することができました。
オオアワダチソウの識別は完璧にできるようになりました!!
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「蚊避けネットで準備万端!」 |
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「オオアワダチソウの見分けはばっちり!」 |
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「こんな藪の中も調査します!」 |
●市民参加のオオアワダチソウ抜き取り調査
<目的>
オオアワダチソウを一番効率的かつ効果的に駆除するには、どのような方法がよいのかを調べるためです。どのくらいの人手で、どのくらいの時間がかかったのか、効果はどのようなものか、を比較します。
<方法>
今回は50m×25mの調査区で、『手で根っこから引き抜く』という方法で駆除を行いました。根を残さないように慎重かつ迅速に抜き取りました。
抜き取ったものは、地面に置いておくとそこから根をつけてしまうため、木の枝の上など直接地面に付かないようにして処理します。
<成果>
一般市民の方8名+ワークキャンプ参加者8名+レンジャー3名の合わせて19人で、8600本ものオオアワダチソウを抜き取りました。 |
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「全てオオアワダチソウです!頑張って抜き取りました!」 |
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(同上) |
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「少しでも根があると、どんどん生えてきてしまいます。」 |
■その他の活動
□0日目(フェリー内)
●きくセミナー
話している人の顔を見る、あいづちを打ちながら聞く、オウム返しをする等、人の話をきく基本の姿勢をゲーム形式で学ぶことができました。
□1日目
●合意形成セミナー
「月に迷ったゲーム」を通して、他の人の意見をきくことの大切さ、意見をまとめることの難しさを学ぶことができました。
●ウトナイ湖、ラムサール条約セミナー
レンジャーの原田さんにより、ウトナイ湖の歴史、ウトナイ湖も登録地であるラムサール条約についてレクチャーをしていただきました。
ラムサール条約の登録条件など、知らなかったことをたくさん学習することができ、ワークキャンプの初めにとてもよい刺激を受けました。 |
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「初めて知ることがたくさん」 |
□3日目
●自分発見セミナー
他のメンバーのよいところを見つけ、それをみんなの前で発表することで自分ではわからなかった自分の長所を見つけることができました。また、ワークキャンプを通して自分に足りないこと、もっと伸ばしたいことも発見できました。
□4日目
●懇親会
10名以上の地元の方に参加していただき盛大に開催されました!手作りの料理から、地元の名産品までたくさんの差し入れをいただきとても豪華 な懇親会となりました。皆、来てくださった地元の方やレンジャーから貴重な話をたくさん聞くことができました。
□5日目
●野外セミナー
ワークキャンプの目玉でもある、受け入れ先の方による現地を実際に見て回るセミナーです。
ウトナイ湖の水源である美々川の源流をはじめ、ウトナイ湖周辺の弁天沼という湿原など貴重な自然を体感できました。また、ゴミの最終処分場、市街地や苫小牧東部開発地域など開発の現場も同時に見て回りました。
心から感動する大自然のすぐそばに、人間の生活のための開発が行われていて…。人間と自然との共生のあり方について全員が考えさせられました。
案内してくださったチーフレンジャーの原田さん、本当にありがとうございました。 |
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「美々川源流の水はとっても冷たい!」 |
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「水生昆虫を囲んで観察会」 |
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「土の採掘場、周りは山に囲まれています。」 |
●野外セミナー振り返り
野外セミナーで感じてきたことを言葉や絵にすることで、ウトナイのよさを再認識し、野外セミナーがより記憶に残るものとなりました。
●自然保護セミナー
ワークキャンプで新たに学んだこと含め、たくさんある自然保護の方法を分類することで「自然保護とは何か」ということを全員で学習することができました。 |
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「自然保護についてみんなで考えてみよう!」 |
■参加者の感想■
東京農工大学2年 岩本愛夢
実際に自然環境問題に直面している現場を見たい!と思い、今回初めてワークキャンプに参加したのですが、想像していた以上に様々なことを学び、感じることができました。
主に今回のウトナイ湖ワークキャンプでは、「外来植物であるオオアワダチソウなどの分布調査」と野外セミナーにて「ウトナイ湖周辺の自然保護をめぐる現状を知る」ということをしました。
オオアワダチソウの調査は、ひたすら藪こぎで、藪に向かって体当たりで進んでいく中で、実際に藪の中に入り、いつもより低い視線に立って見たことで、植生の違いを肌で感じられてとても面白かったです。と同時に、ウトナイ湖の在来植生の中に、オオアワダチソウなどの外来植物の群落がかなり入ってきており、ウトナイ湖の貴重な生態系が今後大丈夫なのか、考えさせられました。
また、野外セミナーでは、一見きれいでとても幻想的な川の源流部が、実は窒素汚染が深刻だったり、湿原や草原などのウトナイ湖周辺に残されている貴重な自然も、いつ開発されてもおかしくない状態だったりと、自然と開発をめぐる問題について深く考えさせられました。これらの問題を考える上で、開発の必要性、保護の重要性、地域住民の暮らしなどを十分に考えて議論しながら、それぞれの立場の人たちが納得のいく着地点をうまく探し出せるかが重要なのではないかと思いました。
最後に、このワークキャンプを通して、温かい人柄のレンジャーさんたち、熱い思いをもったメンバー、その他地域の方々など、素晴らしい方々と出会えたことが何よりの宝物だと思います。
この経験をステップとして、さらに今後の活動につなげていきたいと思います。
東京農業大学1年 亀崎愛
今回、私は大学の講義でFAのことを知り参加しました。以前から自然保護のボランティアをやりたいと思っていたので、勇気を出して参加してよかったと思っています。ウトナイ湖は、サンクチュアリという鳥獣保護区にもかかわらず飛行機が飛んでいたり、周りは工業地帯であったりと開発が進んでいる場所でした。美々川源流のように自然豊かな場所もあると思ったら、水は富栄養化が進んでいたりと知らないと分からないことばかりでした。今回、作業で調査した外来植物のオオアワダチソウも、以前の私なら綺麗な黄色い花だと思っただけでした。たくさんの事を知ることができ、良かったです。
そして何より、人と話すことの楽しさを知りました。今までは、人見知りで、初対面の人と話すことが苦手でした。しかし、ワークキャンプを通じて今までもったいないことをしてきた、もっと多くの人と話したいと思えるようになりました。こんなにも充実したワークキャンプになったのは、一緒に活動した仲間たちそしてレンジャーの方達のおかげだとおもっています。貴重な体験をありがとうございました。 |
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