2009夏 鶴居ワークキャンプ 報告
<受入先>
北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南
 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
  有田茂生チーフレンジャー
  伊藤加奈レンジャー
  加藤健太郎レンジャー

<参加者>
7人
東京農業大学、東邦大学、帝京科学大学、麻布大学、東京工業大学、東京農工大学

<開催期間>
2009年9月9日〜14日(5泊6日)
【スケジュール】
<1日目>
午前:移動、集合、買出し
午後:オリエンテーション
 夜:フリータイム

<2日目>
午前:タンチョウの冬期自然採食地の整備・創出
午後:タンチョウの冬期自然採食地の整備・創出
 夜:合意形成セミナー

<3日目>
午前:サンクチュアリ給餌場周辺の整備
午後:サンクチュアリ給餌場周辺の整備
 夜:自然保護セミナー

<4日目>
午前:D型ハウスの整理
午後:タンチョウの冬期自然採食地の整備・創出
 夜:懇親会

<5日目>
午前:野外セミナー
午後:野外セミナー
 夜:野外セミナーふりかえり

<6日目>
午前:大掃除、全体ふりかえり
 昼:解散
【タンチョウ】
「タンチョウヅル(丹頂鶴)」とも言われるこの鳥は、旧千円札や花札に登場する、多くの人のイメージする「ツル」だと思います。
明治以降の北海道開拓の波の中で住処が次々と失われ一度は絶滅したかに思われた鳥ですが、伊藤良孝さんはじめ鶴居の人達や(財)日本野鳥の会の尽力により、現在では1000羽以上にまで回復しています。

その大きな要因は「給餌(きゅうじ)」。
冬にエサを取ることが非常に厳しいタンチョウのために、地域の人達が行ったことがきっかけです。今でも3つの大きな給餌場(鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ、鶴見台、阿寒国際ツルセンター)には、かなり多くのタンチョウが飛来してきます。

しかし、伝染病蔓延による激減や人馴れの恐れがあります。
また、本来自然のタンチョウがする生き方でもありません。

そこで(財)日本野鳥の会では次なる一歩として
 一、給餌への依存緩和・自然採食の促進
 一、冬期自然採食地の保全・創出
の推進に着手しています。
【作業の報告】
▼タンチョウの冬期自然採食地の整備・創出

 サンクチュアリの近くでは湧き水が出ており、それにより小さな湿地帯ができています。
 ですが、このままでは冬になると氷が張ってしまいタンチョウはエサを取ることができません。そのため今回は、水路を掘って流れのある川にすることで凍結を防ぎ、タンチョウが冬期も自力でエサを取ることができるような環境を作りました。
▼サンクチュアリ給餌場周辺の整備

 サンクチュアリの給餌場の脇には、かつて伊藤良孝さんが酪農をなさっていた頃の牧舎牧舎がありましたが、倒壊寸前だったため2004夏のワークキャンプで解体作業を行いました。
 しかし、トタン、木材、ガラスなどの廃材が未だに残っており、時が経つにつれ細かくなった破片をタンチョウがつついたりしないよう、撤去・回収しました。
 集めた廃材は、トラックでゴミ集積場に捨てに行きました。
 帰りには釧路湿原野生生物保護センターに連れて行っていただけました。
 北海道の希少な動物について学ぶことができました。
▼D型ハウスの整理

 サンクチュアリには大きな倉庫(D型ハウス)があるのですが、昔からありとあらゆる物が詰め込まれ続け、今ではほとんどスペースがありません。
 資材置き場として、また作業場として今後活用するため、ハウス内の整理を行いました。
【その他の活動】
▽合意形成セミナー

 人それぞれ皆ばらばらの考え方をもっていますが時には一つの考え方にまとまる必要があります。それもお互いが納得する形(合意)で。自然保護の現場では特に大切になります。
 そこで、話し合いの大切さと「合意する」のに必要な考え方を学び、実践しました。
▽自然保護セミナー

 「自然保護」と一口に言っても、その活動形態は様々です。
 このセミナーでは自然保護の基本的な形とそのつながりについて学びました。

▽懇親会

 受入先のレンジャーの方が呼んでくださった村の方々との交流会。タンチョウ保護側、被害を受けている農家、タンチョウを撮り続けている写真家など、普段は絶対話す機会がないような、色んな立場の方々からの生の声を聞きました。そして、タンチョウがいる村ならではの人々の動きや喜び、苦労話を通じて、タンチョウの良いところも悪いところも学ぶことができました。

▽野外セミナー

 受入先のレンジャーの方々からタンチョウとそれを取り巻く環境との歴史や現状・問題点について、実際の現場(鶴居村内と釧路湿原)に車で向かい、教えて戴きました。
 釧路湿原に入ったり、開発の現場を目撃したり、保護区を見たり。今までの作業などでレンジャーから、懇親会で村の方々から聞いた話をリアルに体感することができました。
 また、道中でタンチョウ・エゾシカ・キタキツネ(と、その問題行動‥‥)を見ることもできました。
【参加者の感想】
帝京科学大学2年 飯塚伊代

鶴居ワークキャンプでは、楽しい体験をたくさんしました。タンチョウのために採餌場所を掘ったとき、泥んこになったけれども次来たときタンチョウがここでごはんを食べているんだと思うとすごいウキウキします。また、面識のなかったいろいろな大学のみんなと仲良くなれたこともとてもうれしかったです。
【ワークキャンプを終えて】
東京農業大学4年 阪本森人 チーフコーディネーター

「将来は自然に関わる何かがしたい」

そう思っている人にぜひ来てほしいのが、鶴居ワークキャンプです。
「ここは本当に日本か!?」と確認したくなるようなスケールの釧路湿原。ものすごく近く感じる空。文字通りキラッキラに輝く星空。空を舞うタンチョウヅル‥‥。
東京で生活している人にとって、そのインパクトは最早カルチャーショックです!

‥‥ですが、それと同時に北海道が決して「広がる大自然」が確保されている場所ではないということも、鶴居は教えてくれます。タンチョウとて一度は絶滅しかけてますし、そもそも自然が十分に残っているならあえて「サンクチュアリ」なんてもの必要ないはずです。
今回のワークキャンプでも、自然の河川を大改修して作った直線的な人工河川や、埋め立て中の湿原を見ました。またとある道路では、道の片側は保護区となっていて釧路湿原が広がる一方、反対側は保護区ではないようで、重機による工事の真最中でした。

今日、リサイクルしたりCO2排出量を減らしたりと様々なエコがされていますが、温暖化などの大きな環境問題が注目される陰では、もっともっと身近なところで開発によって自然が失われていたりします。

もしも「将来は自然に関わる何かがしたい」と思っているなら。そうでなくても自然について少しでも興味があるなら、もしくは好きなら。その魅力はもちろん!置かれている現状や課題、それに対する取り組み、そして実際自然に対してどう付き合っていったらよいか、どういう関わり方があるか‥‥。
夏休みの1週間を使ってそんなことを知っておくのも、大切かなと思います。

特に、夏の鶴居はそれらを知ることができる場所です。
タンチョウとそれを取り巻く自然環境、そして立場の異なる村の方々を通じて。

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