2008春 根室WC報告
〔開催地〕
(財)日本野鳥の会 野鳥保護区事業所(北海道根室市東梅)

〔開催期間〕
2008年2月27日(水)〜3月3日(月)5泊6日
【スケジュール】
1日目(2月27日)
買出し
根室の自然・日本野鳥の会について(受け入れ先の方より)

2日目(2月28日)
河口にてワシ類調査
不凍河川・湧水調査
巣箱用樹皮探し
巣箱作り
山本純郎氏よりシマフクロウの講座

3日目(2月29日)
巣箱作り
目隠しツアー
巣箱かけ
巨木調査
フクロウ調査

4日目(3月1日)
野外セミナー
買い出し
懇親会

5日目(3月2日)
巣箱かけ
セミナー

6日目(3月3日)
大掃除
根室ワークキャンプの振り返り
看板立て
【作業場所】
■渡邊野鳥保護区フレシマ

2005年3月、法的指定がなされていない湿原と草原を渡邊玲子氏からのご寄付を元に買い取った。
この保護区は、根室市の太平洋側に位置し、五本松川とホロニタイ川の下流域に広がる湿原と湖沼と草原で形成され、北海道の海岸線の原風景が残されている。1970年代からタンチョウが繁殖している由緒ある地域である。
(財団法人日本野鳥の会 のHPより抜粋)

■渡邊野鳥保護区ソウサンベツ

2002年、渡り鳥やタンチョウの重要生息地である国設鳥獣保護区風蓮湖畔に隣接していて、法的指定がなされていない湿原と山林を渡邊玲子氏からのご寄付を元に買い取った。この保護区は風蓮湖西側に位置し、ソウサンベツ川、アッツトコベツ川、湖南川の下流域に広がる広大な湿原と山林で形成されている。面積は368haで当会の野鳥保護区としては最大。民間の保護区としても最大級である。タンチョウ1つがいが繁殖、隣接地では2つがいが繁殖し、自然採食地として利用されている。
(財団法人日本野鳥の会 のHPより抜粋)
【作業報告】
▼不凍河川・湧水調査(渡邊野鳥保護区フレシマ)

(目的)冬はあまり管理していないので、冬場でもこんこんと湧く川があるか調べる。フレシマではタンチョウが毎年繁殖を行っています。根室の冬の河川は、ほとんどが凍ってしまうので、タンチョウは餌をとることができません。フレシマで不凍河川が見つかれば、そこをせき止めるなどしてねぐら、給餌場所を作ることが可能となります。そうすればタンチョウの越冬の可能性が出てくる。という背景からこの調査を行いました。

(内容)沢筋や川沿いを歩きながら、凍っていないところを探し、凍っていないところがあれば、地図に記入し、GPS、デジカメで記録をとる。
不凍河川を2つ見つけることができました。1つは小さいですが魚が泳いでいる姿も確認することができました。
▼巣箱用樹皮探し(渡邊野鳥保護区フレシマ)

(目的)巣箱をカモフラージュするために使う樹皮を集める。

(内容)フレシマの森の中に入り巣箱に張り付ける樹皮を集める。

(報告)樹皮がはがれかけている木や、倒木から巣箱に張り付ける樹皮を集めました。たくさんの樹皮を集めることができ、1袋がビニール袋半分の量で4袋集めました。雪がつもった所を歩くのに慣れてないので、みんな思ってた以上に疲れたみたいです。

▼巣箱作り(別当賀夢原館の体育館)

(目的)ソウサンベツ保護区では、かつてフクロウが利用していた木があったとの情報や、フレシマ保護区では、鳴き声を確認したりと両保護区ではフクロウが生息している可能性があるが、繁殖しているかは不明である。そこで、今回フクロウの巣箱を設置する。今後、フクロウが巣箱を利用し繁殖するかを調査する。という背景からこの調査を行いました。

(内容)二人一組になり、ひとつの巣箱を作る。渡された図面どうりに大きな板に寸法をとり、のこぎりでパーツを切り出し、トンカチと釘で組み立てる。組み立てた後、2つの巣箱はスプレーで色を塗り、もう2つの巣箱はニスを塗った後、樹皮を張り付ける。
どの組も二人で協力しあって木の巣箱を4つ完成させました。早くできた組はカラーボックスの巣箱も作りました。カラーボックスの巣箱はフクロウがはいる穴を切り出し、スプレーで色を塗るだけだったようで、すぐにできあがってしまったそうです。カラーボックスの巣箱は2個つくりました。木の巣箱2つには集めた樹皮を巣箱にはりました。樹皮をはるのは意外と大変でした。

山本純郎氏のシマフクロウの講座。はじめて聞く話にみんなメモとってます。

▼巣箱かけ(渡邊野鳥保護区フレシマ)(渡邊野鳥保護区ソウサンベツ)

(目的)巣箱作りと同じ。

(内容)巣箱が掛けられそうな木をさがす。巣箱にロープをかけ引き上げる。針金で巣箱を木に固定する。とたんを巣箱を設置した木の根元に巻く。
巣箱をかける作業は樹上での作業になるので、今回は受け入れ先の方にやっていただきました。しかし、全ての巣箱をかけ終えた後で、ひとりずつ樹上に登らさせていただくことができました。巣箱が掛けられている高さはとても高かったです。

▼巨木調査(渡邊野鳥保護区ソウサンベツ)

(目的)ソウサンベツには、直径が1mを超える巨木がいくつか存在するが、直径、樹高などのデータはない。今後、保護区活用していく上で、
これらの巨木は保護区ツアーなどの観察資源として利用でき、また、将来的にシマフクロウの巣箱を設置するために樹種、樹高、胸高直径、
立木位置の調査をおこなう。という目的からこの調査を行いました。

(内容)直径が1m以上ありそうな樹木を探し、GPSに立木位置を記録する。また、樹種、樹高、胸高直径を記録用紙に記録する。
この調査ではいろいろ道具を使いました。GPS、計量ポール、巻尺、電卓。道具は1本の木を調査するたびに交換し、全員一回ずつそれぞれの道具を使いました。今回、胸高直径が1mを超える巨木は見つかりませんでした。

▼フクロウ調査(渡邊野鳥保護区フレシマ)

(目的)フレシマには、フクロウが生息している可能性があるが、個体数など詳しいことが分かっていない。そこで、夜間のフクロウ調査を行い、フクロウがフレシマ保護区を利用しているのか、何羽くらい利用しているのか、保護区のどのあたりを利用しているかなどを調べるという背景からこの調査を行いました。

(内容)各ポイントに一人ずつ配置し、声が聞こえたら、方角、距離、時間を記録用紙に記入する。

(報告)初めての夜の調査。みんなしっかり防寒して調査をしました。防寒がしっかりしていたからなのか、暖かい日だったのか、予想より寒さは厳しくなかったです。調査は波の音しか聞こえませんでした。
【その他の活動】
◆懇親会
ネイチャーセンターの方々と根室で自然保護活動をしている人が来てくださいました。たくさんの料理を食べながらいろいろな話をしました。根室の昔の姿、北方領土問題の話、自然保護の話。この場でしか聞けない貴重な話をたくさん聞くことができました。

◆セミナー
「自然」について自分の興味がある事、考えている事、話したい事を一人ずつ全員が話しました。人の話を聞くだけでなく、自分が話をする場があること。みんなと意見交換ができたこと。普段の生活ではあまりない機会にみんな楽しんでくれました。
野外セミナー中!説明を聞きながら野生の生き物を見てます。
【チーフコーディネーターの感想】
普段とは違う成長をしたい。現場でしか得ることのできないものを得たい。フクロウのことをもっとよく知りたい。という思いを胸にチーフコーディネーターとして根室ワークキャンプに参加しました。リーダー系の役割をしたことのない自分には毎日、毎日が試行錯誤の日々でした。できないこと、至らないことがありましたが、この経験がこれからに生きていくよう反省をしてものにしていこうと思います。一緒にワークキャンプを作ったコーディネーター、受け入れ先の方々、そして参加者のみんな。本当にありがとうございました。
【参加者の声】
『根室ワークキャンプに参加して』
法政大学 人間環境学部 人間環境学科 1年
源関 絢

何か自然保護に関するボランティアをやってみたい。そう思って見つけたのがこのField Assistant Networkのワークキャンプでした。実際の現場の手伝いができる、同じような事に興味を持った学生と話せる、シマフクロウが見られるかも、そんな理由で私は根室のワークキャンプに参加しました。
根室の自然は多くの命を抱え込みながらも静かで広大な存在でした。寒いと言うよりは痛いと言った方がいい空気の冷たさも氷った風蓮湖の上を歩きながらオジロワシやオオワシが飛ぶ姿を双眼鏡で追った時は忘れていました。他にもコゲラやコオリガモなどいろんな鳥と出会うことができました。ワークキャンプではいろんな体験をさせてもらい、その中でも夜の野鳥保護区フレシマで体験したフクロウ調査は私にとって貴重な時間でした。フクロウを探すため夜の森で全神経を集中させ眼を凝らし、耳を澄まして立っている。寒さや怖さはあまりなく、自分の小ささと自然の大きさと深さ、空の広さと星の美しさなどを感じられる時間でした。
エゾフクロウやシマフクロウの巣箱作りも楽しい経験でした。自分たちでノコギリやカナヅチを使い作った巣箱が木の上に乗った時は何となく誇らしい気持ちになりました。巨木調査ではフクロウが巣として利用できる木が少ないことを知り、1本の巨木が虫から鳥や蝙蝠までの生活を支えていることを教えてもらいました。
このワークキャンプではレンジャーの皆様はじめいろんな方々にお世話になり様々な事を教えていただきました。そして根室に一緒にやって来て共に過ごした仲間がいたからこそ楽しく大切な思い出を作ることが出来たと思っています。言葉にはっきりとはできないけれど大切なものを得た気がします。根室ワークキャンプに参加できてとても楽しかったです。学んだこと、感じたことを忘れずこの先に活かしていけるようにしていきたいです。

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