2008夏 キナシベツWC報告
■開催地
(社)日本ナショナルトラスト協会 キナシベツ自然保護地区(北海道釧路市音別町直別)

■開催期間
2008年8月30日〜9月8日

■参加大学
玉川大学、跡見学園女子大学、法政大学、日本女子大学、帝京科学大学、武蔵野大学、東邦大学
【スケジュール】
8月30日(1日目)
羽田空港集合
釧路空港到着、昼食、買出し
開会式(オリエンテーション)
セミナー:キナシベツ自然保護史

8月31日(2日目)
バラ線修復&看板修復
木道散策路作り下準備
セミナー:「きく」セミナー

9月1日(3日目)
キナシベツ海岸ゴミ拾い
セミナー:「しゃべり場」

9月2日(4日目)
木道散策路作り(資材運び)
木道散策路作り(釘打ち)

9月3日(5日目)
フィールド・トリップ
(アイヌコタン〜阿寒湖ビジターセンター〜屈斜路湖〜コッタロ湿原〜細岡展望台)

9月4日(6日目)
野外セミナー
セミナー:野外セミナー振り返り

9月5日(7日目)
木道散策路作り(釘打ち)
看板立て(乙部海岸)
ゴミ拾い(乙部海岸)
セミナー:ナイトハイク

9月6日(8日目)
看板立て(キナシベツ海岸)
バラ線修復
遡上調査
懇親会

9月7日(9日目)
看板立て(尺別海岸)
ゴミ拾い(尺別海岸)
セミナー:「キナシベツの今後」セミナー

9月8日(最終日)
大掃除
閉会式(全体の振り返り)
【作業報告】
<バラ線修復&看板修復>
バラ線張りは、車や人の立ち入りによって海岸の植生を壊されてしまうことを防ぐために行ないました。
今回は、劣化した箇所を新しいバラ線を張り直すことをしました。
看板修復は、数年前に作成した看板が壊れていたのでその修復をしました。
<木道散策路作り>
この作業は、人の立ち入りによる湿原への影響を小さくし、かつキナシベツに訪れた人々にキナシベツの自然を知ってもらうために作成しております。枕木や2.2mの木板を運ぶのは大変でしたが、メンバー全員が釘打ちが非常に上手くあっという間に50m作成することができました。
そして、06年より始まった作業は、無事完成を迎えることができました。その長さ全長280メートル!
この木道を通り、『見晴らしの丘』まで登ると、キナシベツ湿原を一望できます。
<看板設置>
キナシベツという場所は、まだまだ一般の方には馴染みがない場所です。そのため、知らずに貴重な自然に立ち入ってしまうことも少なくありません。そこで、看板を通して貴重な植物があることを伝えて、車や人の立ち入を防ぐために行なっています。
今回は08年春に作成された3枚の看板を尺別海岸・キナシベツ海岸・乙部海岸に建てました。
普段使わないスコップを使い1m近く掘るのは大変でした…。
<海岸のゴミ拾い>
尺別海岸・キナシベツ海岸・乙部海岸の3つの海岸で実施致しました。人間の捨てたゴミにより生態系の影響を減らすため、他の作業の合間や雨天時に行ないました。生き物が多く生息する流木等は拾わず、人間のゴミを中心に拾いました。
集めたゴミは、各自治体の処分方法に従い分類し、処理致しました。今回のワークキャンプで集めたゴミの多さに一同唖然としました。
<遡上調査>
キナシベツ湿原沿いを流れる直別川の健康状態を調べるための調査です。直別川は直線化と護岸工事が行なわれました。それにより、直線化以前との魚種の変化を調べるために行なっております。今回は、50センチ前後のアメマスが大量に捕獲できました。その他にも秋鮭の姿を確認することができました。50cm前後のアメマスが網に当たった衝撃は何とも言えない手応えでした♪
【その他の活動】
<フィールド・トリップ>
雨で作業が出来なかったため、釧路周辺の自然を見に行きました。アイヌの文化や釧路の歴史に触れて学んだり、
屈斜路湖で足湯につかり作業の疲れを取ったり、コッタロ湿原で馬・鹿・タンチョウで動物を見ることが出来たりなど
とても充実した一日でした。

<セミナー>
●キナシベツ自然保護史(1日目)
受け入れ先の榊原さんに活動現場であるキナシベツ自然保護地区での自然保護活動の歴史や概要についてお話頂きました。
今回のメンバーは、初めてキナシベツを訪れる人がほとんどだったので、作業の前に「自分たちは何をしにきたのか?」を
より理解することができました。

●「きく」セミナー(2日目)
このセミナーでは、人の話を「きく」ということができているのか?をゲームを交えながらチェックしました。
そして、相手とよりよい話をするための「きく」側の姿勢を学びました。

●「しゃべり場」(3日目)
参加者全員が一人一人「自分の興味があることについて」10分弱ずつ発表しあいました。
「ゴミ拾いの意義」「里山」「川」「馬」「食生活」など様々なテーマがあり、自分の知らないことを学べ、さらにメンバーのことを
より知る機会となり、とても楽しいセミナーとなりました。

●野外セミナー(6日目)
キナシベツ自然保護地区の自然を肌で実感するため、1日歩きました。
二次林→海岸植物→原生林のコースは、次々と景色を変えてよりこの場所を好きになり、作業にもさらに力を入れて取り組むことができました。
途中の川渡りや崖登りは、スリル満点でした☆

●「キナシベツの今後」セミナー(9日目)
今回のワークキャンプで「キナシベツ」という場所のどのような所が好きになったか互いに発表し、その後「今後も
キナシベツを守るには自分達には何ができるのか?」等を受け入れ先も含めて参加者同士で話合いをしました。
【参加者の感想】
『ありがとうキナシベツワークキャンプ』 
井倉貴人(帝京科学大学 生命環境学部 環境科学科 2年)

私の大学には環境問題の授業があるのですが、実際のフィールドに立たない限り現場をもっと詳しく理解することはできないと考えていました。そこにFAからワークキャンプへの誘いのメールが届き、興味がわいたので良い機会だと思い参加することになりました。
活動に参加する前までは、もっとたんたんと作業を繰り返して働くようなものだと思っていましたが、現地の受け入れ先の人たちや参加者の方々はいい人たちばかりで、とても楽しく充実していてあっという間に10日間が過ぎました。
みんなとキナシベツの自然を感じ、作業をして、家事の手伝いを一緒に手伝い、一日の出来事などを話し合うなど楽しく愉快なことばかりでした。
作業は木道作り、バラ線張り、看板立て、ゴミ拾いなどを行いました。どれも決して楽なことではありませんでした。
ですが、作業の一つ一つがキナシベツ湿原のためになっているのだと思うとやり甲斐がありました。
なによりも一緒に手伝ってくれる仲間がいたことが大変な作業も楽しくなるのでした。
このワークキャンプに参加したことで、大自然を体感し、環境問題の勉強もできました。
私が一番嬉しかったことは優しい人たちに恵まれたことです。そのおかげで人と関わっていくことが楽しくなり、これからはもっと人と積極的に接していこうと思いました。私はこのワークキャンプで多くのことを学び、こんなに満足して帰ることができて本当に参加してよかったと思いました。
『キナシベツワークキャンプを終えて』
清水美樹(武蔵野大学 人間関係学部 環境学科 環境アメニティ専攻 1年)

今回ワークキャンプに参加した理由は、沢山の人に出会え、自分の視野を広げるチャンスだと思ったからです。
そもそも、どんな活動が保護に繋がるのか深く考えたこともなく、実際にやってみなければ解らないことばかりでした。
慣れない金槌やペンチに四苦八苦し、木材を一人で運べなかったときは本当に悔しかった。
自分の力がちっぽけで役に立てているのか不安になりましたが、そんな時、仲間の存在の大きさ、助け合いの素晴らしさに気付かされたのでした。
また、綺麗な風景に似つかないゴミの量に愕然とし、特に衝撃を受けたのは、布団やテレビ、餅つき機などの粗大ゴミが捨ててあったことです。
キナシベツは本当に美しいところです。この雄大な自然の美しさは写真では伝わりません。
一方で、荒らされた海岸草原、釣り人に誤って糸を掛けられた海鳥、流木で焚き火した跡、無残に捨てられた煙草の吸殻など、悲しい光景も数々目にしました。
また、地元の人たちに保護を強要する方法では、キナシベツの自然を守れないという理念は、ここに来るまで全く想像もつきませんでした。
自然保護って本当に難しいです。沢山の人の想いがあるのに、一筋縄では共感してもらえない。
ワークキャンプでは、皆の胸に秘めた想いを聴くことが出来ました。私が気付けなかった事を沢山感じ取っていて、みんな本当に凄い。
十人ともそれぞれのキナシベツが映っているのに、守りたい想いは一つです。体全体でキナシベツを満喫した十日間でした。
トラストの家はいつも笑顔が絶えず、温かくて、まるで家族のようでした。源さん、タモさん、みんな、本当に出会えて良かったです。
これからも、自然保護活動に関わっていきたいと思います。いつまでもキナシベツが美しい場所でありますように…
チーフコーディネーターの感想
(玉川大学文学部リベラルアーツ学科4年 高橋睦)

今回は、私以外の参加者がキナシベツへ初めて訪れるという状況での参加でした。(私は4回目の参加でした)
ワークキャンプが始まるまでは色々不安がありましたが、いざ始まればそんな不安があっという間に吹き飛ぶほどみんな協力的で積極的に行動してくれてチーフとして本当に助かりました。また、悪天候のため幾度となく作業変更を余儀なくされて非常に難しかったですが、これもみんなのチームワークで無事予定された作業を終えられて良かったです。
特に木道散策路作りは、06年夏ワークキャンプにも参加していたので、完成の瞬間に立ち会えたことをとても嬉しく思いました。
10日間の生活は、長いようであっという間で当たり前に「ありがとう!」という言葉が飛び交う毎日でした。
また、今回は唯一の4年生でしたが、他の参加者の「自然」への思いや取り組みを聴きとても刺激を受けました。
普段文学部に所属していて、あまり学べない分野も参加者から教えてもらうことができ、非常に勉強になりました。
今回のワークキャンプは終わったけど、それと同時にまた新たな目標へ向かうスタートとすることができました。
これからもこのキナシベツを訪れて、「自然保護」へ取り組みたいと思う学生の輪が作られていくといいなと思います。

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