2007 春 鶴居WC報告
<開催地>
北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南
 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

<開催期間>
2007年3月1日(木)〜3月8日(水) 6泊7日
【スケジュール】
3月1日
羽田空港で集合、昼食、買出し
オリエンテーション
アイスブレイク

3月2日
ねぐら調査
鶴見台現況調査&データ集計
タンチョウセミナー

3月3日
ねぐら調査
鶴見台現況調査&データ集計
自然保護セミナー

3月4日
ねぐら調査
鶴見台現況調査&データ集計
プレゼンテーションセミナー

3月5日
タンチョウティーチャーズガイド実施・改訂
懇親会で行う発表の準備

3月6日
野外セミナー
懇親会

3月7日
全体振り返り
昼食後、釧路駅で解散
【作業報告】
◆ねぐら調査
タンチョウのねぐら利用の状況を調べるために早朝、ねぐらにいるタンチョウを数える作業を行いました。
調査場所は雪裡川で音羽橋やその上流にいるタンチョウの数を数えました。この調査は継続的に続けられており、土砂の流入など釧路湿原の環境の変化をタンチョウが受けているか観察することに役立っています。
60羽ほどのタンチョウが群れて川にいる姿は圧巻でした。
◆鶴見台現況調査&データ集計
鶴見台はタンチョウ保護のため、タンチョウが人里にいる冬の間給餌が行われている場所です。
多い日で300羽ものタンチョウがやって来ますが周辺に電線が多く、観光客も多く訪れることなどから様々な問題が起こっているとされています。
しかsどのくらいタンチョウが影響を受けているのかなど、はっきりとしたデータはありませんでした。
それを調べるための「タンチョウの事故発生状況調査」と「観光客来訪状況調査」が2006年の年末から行われており、私たちも地元の方に混じって行いました。

・タンチョウの事故発生状況調査
タンチョウは本来足を伸ばしたまま飛んでいます。しかし障害物から十分に距離をとれない場合など、飛ぶのに何らかの影響を受けると足を曲げて飛んでいきます。
その「足曲げ」が起きていないかをタンチョウの給餌場である鶴見台周辺で観察しました。
電線や木の上を通過するとき足を曲げるタンチョウが多く見られ障害物の影響の大きさを感じました。
調査中最も障害物の影響がみられたのは人通りも車も多い調査ポイントで、人がタンチョウに影響を与えていることを実感することができました。
また、それまでの調査のデータ集計も行いました。

・観光客来訪状況調査
鶴見台周辺にある駐車場に来る車の台数と乗車人数およびその種類、観光バスが来た場合は乗車人数やどこから来たかを運転手やガイドの方に聞きに行きました。
並行して鶴見台にあるトイレの利用状況も調べました。タンチョウの多く見られる時期ということもあり調査中ひっきりなしに乗用車やツアーバスが訪れ、本当にたくさんの人が訪れていました。
・タンチョウティーチャーズガイド新プログラムの実施、改定
タンチョウティーチャーズガイドは、タンチョウについて人に教える際、利用してもらう学習プログラムのことです。
教師、自然観察会のリーダーなど指導する立場にある人に役立ててもらい、タンチョウについて多くの人に知ってもらうことを目的としています。
今回は二つの新しいプログラムを実施し、改善したほうがよい点、良かった点をあげていきました。みなプログラムを楽しみながらも気づいた点を真剣にあげていました。
【その他】
◆セミナー
自然保護、タンチョウ、プレゼンテーションについて学ぶセミナーを行いました。シュミレーションや紙芝居形式など、
様々なアプローチで話し合いや発表になじんでもらい、タンチョウをより身近に感じてもらうことができたのではないかと思います。

◆野外セミナー
レンジャーの方々に釧路湿原を案内していただいたほか、温根内ビジターセンターの指導員の方と歩くスキーで木道散策もし、釧路湿原の自然の豊かさを体感することができました。また鶴見台で給仕をなさっている方やタンチョウにより被害を受けている農家のかたのお話を聞くことでタンチョウに人間が及ぼす影響だけでなく、タンチョウが農家の方々に及ぼす影響も知ることでタンチョウとの共存について深く考えることができました。

◆懇親会
農家の方、自然保護にかかわっている方のほか、鶴見台現況調査に参加された方々にお越しいただき、様々なお話を聞くことができました。
また、調査の集計結果を懇親会の席上で発表しました。調査に参加された方々はもちろん、懇親会に参加された皆様に興味を持って聞いていただけたようです。


【参加者の感想】
岡田英昭(日本大学生産工学部土木工学科環境コース)

初めて足を踏み入れた鶴居の地は・・・アツかった。もちろん気温のことではない。
ラムサール条約登録湿地である釧路湿原、絶滅危惧種のタンチョウたち。
これらの貴重な自然と隣り合わせに生活をし、共存の道を探っている地元の方々を私は『アツい!!』と感じたのだ。

今回のワークキャンプに参加するにあたり、事前に私は鶴居や釧路湿原についての情報を集めた。その結果得られた外来種問題や都市・農地開発、あるいはそれによる土砂の流入で湿原の面積が縮小しているという事実は、鶴居は『人と自然が対立している場』であるというイメージを抱くに充分なものであった。

 しかし、実際に私が鶴居で見たものは、自然と共に生きることを選び、より良い関係の構築を目指す人々の姿だった。酪農家の方は、タンチョウによる牛の餌の食害などに悩みながらも、タンチョウが見られる鶴居であり続けることを望んでいらっしゃったし、トメさんは冬の間餌不足に陥るタンチョウに毎日給餌をなさっている。正直、人が野生動物に餌を与える事には否定的なのだが、そんな私にレンジャーの音成さんは給餌をする意義などをアツく語って下さった。そのときはみんなで温泉に浸かっていたので、音成さんの言葉と湯船にのぼせそうになったが、このとき語りあった事で新しい事実を知り、またいろいろ考えることができた。本当にいい思い出である。

他にもワークキャンプ中、自然保護のため植樹をするも、自然の一部である鹿によってそれが阻害される事に悩むトラストサルン釧路の話なども聞くことができた。
『人と自然の共存する形を模索している場』これがワークキャンプを終えた後の鶴居の印象である。
この問題は野外セミナーで見た、霧が立ち込めた釧路湿原のように先が見えず、奥深いであろう。
それに挑む鶴居村はこれからも目が離せないし、また再び訪れてみたいと思っている。

最後にこのような貴重な体験をする機会を与えてくれたFAのスタッフのみんな、チーフとコーディネーター、色々話して下さったレンジャーと地元の方々、そして一緒に活動した仲間たち。心から感謝しています。ありがとうございました!
杉山 智佳(目白大学人文科学部言語文化学科2年)
 今回、鶴井WCに初めて参加させていただいたのですが、私にとってこの一週間は、良い意味でショックの連続だったよう思います。
 私のWC参加動機は単純なもので、タンチョウを生で見たみたいという目的が前提にあり、その上で、何か動物保護のお手伝いができればいいと考えていました。決して観光目的ではなかったのですが、考えに甘いところがあったよう思います。事実、慣れない集団生活に戸惑い、人前での発言というプレッシャーも重なって、目の前の作業をこなすことでいっぱいになってしまったことも否めません。それが原因で、他の参加者の方にご迷惑をかけてしまう面も多々ありました。本当に申し訳なく思っています。
 それでも、疲れや睡眠不足などはどうでもよく思えてしまうほど、このWCには素晴らしい出会いが沢山あったように思います。
 鶴居・伊藤サンクチュアリのレンジャーをはじめ鶴居村に住む様々な人々の自然やタンチョウの保護に対する真剣な姿勢や、その大きな情熱に触れていくうちに、今自分が自然保護、動物保護のために何が出来るのかを真剣に考えるようになっていきました。
 特に印象深かったことは、により被害を受けておられる酪農家の方が、自分も鶴居村に生まれたのだから、やっぱりタンチョウが好きだとおっしゃっていたことです。自分たちの生活のため湿原を牧草地としたことを、タンチョウにとって悪いことだったと話してくださった上で、それでもタンチョウと自然、それらと人間は共存していけるはずだと、前向きに考えていらしたことに、本当に心を打たれました。
 鶴居村の魅力は何? と聞かれれば、私は迷わず人だと答えます。鶴居村には丹頂や自然保護を真剣に考えている方が沢山いらっしゃいます。そんな、鶴居村に住む人々の姿勢が私にはとても魅力的に映りました。言葉足らずで、琴線に触れた想いも、感じたことや言いたいことの半分も、鶴居村の方々に伝えることができませんでした。今となっては、それだけが少し心残りです。

今回のWCにより、今まで知らなかった世界に触れ、自分自身の視野も多少なり広がったよう思えます。不慣れなためご迷惑ばかりをかけてしまいましたが、このWCで得たものをこれからも大切にしていきたいです。素晴らしいものを沢山見せて頂きました。心から、このWCに関わってくださった全ての方にお礼を言いたいです。それから、チーフやコーディをはじめとする参加者の皆様。一週間という短い期間でしたが、ひとつ屋根の下で寝食を共にし、なんだか家族のような関係になれた気がしました。とても楽しかったです。本当にありがとうございました。

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