2007 春 キナシベツWC報告
【開催地】(社)日本ナショナルトラスト協会 キナシベツ自然保護地区(北海道釧路市)
【開催期間】2007年2月18日(日)〜2月27日(火) 9泊10日
【スケジュール】
2月18日(1日目)
 午前 釧路空港集合
 午後 開会式&オリエンテーション
 夜  集団生活セミナー
    ワシ・タカセミナー

2月19日(2日目)
 午前 オオワシ・オジロワシ生息数調査
 午後 看板作り(デザイン決め)
 夜  合意形成セミナー

2月20日(3日目)
 午前 アオサギコロニー調査
 午後 アオサギコロニー調査
    看板下地作り
 夜  植物セミナー

2月21日(4日目)
 午前 自然誌調査
 午後 自然誌調査
 夜  自然誌調査現況図おこし

2月22日(5日目)
 午前 ワカサギ釣り
 午後 看板製作
 夜  懇親会の発表物作成(高橋)&ナイトハイク

2月23日(6日目)
 午前 看板作成
 午後 看板作成
 夜  懇親会

2月24日(7日目)
 午前 野外セミナー
 午後 野外セミナー
 夜  看板作り
    自然保護史&野外セミナー振り返り
2月25日(8日目)
 午前 参加者見送り&看板作成
 午後 看板作成
 夜  看板作成

2月26日(9日目)
 午前 看板作成
 午後 看板作成
 夜  看板作成

2月27日(10日目)
 午前 大掃除&全体振り返り&閉会式
【作業報告】
○オオワシ・オジロワシ生息数調査
毎年行われている一斉調査の参考資料として、乙部海岸から海沿いの各ポイントを周りました。
途中、ハヤブサ2匹がノスリを攻撃するという貴重な光景に参加者全員興奮しました!
調査結果は、オオワシ3・オジロワシ4・不明ワシタカ1、ハヤブサ2、ノスリ1、トビ多数でした。

○アオサギコロニー調査
キナシベツの自然環境の動向を図る指標として行われている継続調査で、今年で9年目になりました。
今年は、昨年と巣の場所がかなり変わっており例年以上に調査に苦労しましたが、105個という結果になり、調査9年目にして初めて100個を越え参加者一同達成感がありました。
○自然誌調査
キナシベツ自然保護地区内の状態を把握するため、毎年少しずつ分割して調査し、人工物がどの程度あるかなどを調べています。
今年は、乙部海岸から原生林を横断するルートをかんじきをはいて半日歩きました。
今まで描かれていた地図の状況と違いがあり、受け入れ先も調査したかいがあったとおしゃっていました。
また、原生林に入るという貴重な体験ができ、改めて自然の持つ壮大さを感じることが出来ました。
○看板作成
キナシベツ自然保護地区の案内板として、毎年数枚ずつ制作し、キナシベツ自然保護区内を知ってもらったり、啓発などを行いました。
今回は、夏に製作している木道の名前の看板を1枚、乙部海岸・尺別海岸1枚づつ・昨年の春に製作した木道沿いの看板と同様に、クサソテツ(コゴミ)・ヤチボウズの5枚を製作しました。時間を割いた甲斐もあり、納得いく作品を作り上げることが出来ました☆



【その他】
夜には、学生同士が自分の専門分野についてレクチャーしあったり、真っ暗な雪の道を歩くナイトハイク、湖へ行きワカサギ釣りなどを行いました。ワカサギ釣りでは、全部で44匹を釣り懇親会などでみなさんとおいしく頂きました♪
また、懇親会では主に地元の人たちを対象にワークキャンプの成果やキナシベツ自然保護地区の地理の特徴などを発表し、よりキナシベツ自然保護地区に関心をもってもらうきっかけを作ることが出来ました。
【全体として】
参加者が5名という少人数でしたが、各作業とも無事に終えることができました。
初日から徐々に参加者同士打ち解け、セミナーなどでも積極的に発言する場面も見ることもできました。
今回は、前半は調査中心。後半は看板作り中心となっており、体力的にかなり厳しい作業が続きましたが、参加者同士が上手く連携し助け合って全員が看板作りを期間内に作成することができて大変充実した内容になったと思います!!
【チーフの感想】
今回キナシベツWCは3度目でしたが、春は初めてでチーフという立場も初めてでしたが、大変充実していました。
懇親会では、地元の人たちにWCやキナシベツについて知ってもらう場を提供できましたし、野外セミナーにおいても初めて地元の人が1名ではありましたが参加してもらうことができ大変嬉しかったです★
また、例年以上の大きさの看板作成は、かなり大変で時間も大量に割きましたが、5枚ともに良い看板を製作できたと思います。

受け入れ先の榊原さん、森田さん、榊原さんのお母さん、懇親会出席者(伊藤さん、大山さん、杉山さん、小島さん、平間さん、佐々木さん、大西さん)、アオサギ調査を手伝ってくださった沢田さん、差し入れしてくださいました浦幌の近江さん
10日間という短い期間に多くの人たちにお世話になりました。みなさん、本当にありがとうございました。
【参加者の感想】
「キナシベツWC」 
深瀬美里(日本大学生物資源科学部2年)

今回、キナシベツWCに参加したきっかけはコーディネーターの森谷さんから人数が足りないので行ってみないか? と声をかけられ軽い気持ちでじゃあ行こうかなと返事をしたことからでした。
急に決まったことだったので出発前の緊張や不安はあまりなかったような気がします。
オオワシ・オジロワシ調査では前日のセミナーの成果もあり、あまり迷うことなく鳥を見分けていくことができました

スコープから覗いたオオワシのカッコよさや、ハヤブサのつがいの飛ぶスピードの速さに感動!!
移動中の車のボンネットに鳥が当たって死んでしまうという思いがけないハプニングもありました。
このようなことが起きるのも自然が維持され野鳥が多く生息している証なのではないかと感じました。
トリさんごめんね。
原生林の中を歩いた自然史調査は、カンジキを履き雪を掻き分けながら進み多くの巨木などを発見することができました。
人間の手が加わっていない自然の偉大さを体中で感じました。
また、断崖絶壁を歩いたり崖を滑り降りたりとかなりスリルのある体験ができました。
このようなことからナゼ自然保護が必要なのか。どのような活動をすべきなのか。など深く考えさせられました。
今振り返ってみて、活動で得た経験以外にも多くのことを得ることが出来たような気がします。
短期間でしたがこんなに濃密な人間関係を築けたり、少しですが自分の視野も広がったようです。
自然環境のすばらしさを本当にたくさん感じることができ素晴らしい経験だったと思います。
「最後にして最初のキナシベツワークキャンプ」
新田一仁(東京大学農学部生物環境科学課程2年)

FAのワークキャンプ地を一通り巡る、その最後の場所となったのが、今回のキナシベツワークキャンプでした。
FAに長く関わりながらも今の今まで、キナシベツという場所は、人づてに話を聞くだけのもので、「景色がすごい」「アットホーム」「作業がすごい」という話は毎回聞かされてきましたが、今回、その実際を初めて体験することができました。
そういった意味で、今回のキナシベツワークキャンプは僕にとって「最後で最初」の記念すべきワークキャンプとなりました。
初めてといえば、冬の北海道も初めてで、いったいどんな寒さだろうと怯えながら期待していました。 今年は暖冬のため、それほどではありませんでしたが、やはり東京の寒さとは一味もふた味も違い、北国の厳しさを知ることができました。
寒さもそうですが、今回のキナシベツワークキャンプは、自然のすさまじさというものを再認識させるものでした。 キナシベツは、他のワークキャンプ地のウトナイ湖や鶴居(釧路湿原)のように、ラムサール条約に登録されているわけでもないし、天然記念物で有名なわけでもありません。
しかし、ここの自然がただものではないことは、実際にその上を歩いてみてよくわかりました。 調査で森の中を歩き回ったり、野外セミナーでクロスカントリーで横断して思ったことは、ここは広さこそたいしたことは無くても、そこにある自然は他のどこにも負けないぐらい豊かで、賑わいに満ちているということです。
正確には、地面は雪や氷で覆われていたので、その豊かさや賑わいを直接目にしたわけではありませんが、葉の落ちた木々が群れる森や、枯れた草のひしめく海岸草原、凍りついた広大なキナシベツ川は、それらが暖かい春や夏を迎え、草木が生い茂り、水が潤い、動物たちが動き出したならば、いったいどれほどの圧倒的な光景が広がるのかを、強烈に想像させました。 それがすさまじいものであるということを連想するのは非常に易しく、そしてそれがどれほどすさまじいものであるかは、想像を絶するものでした。
野外セミナーでヘシエハケ岬の頂上からの景色を一望したとき、その眠っている箱庭のようなキナシベツの姿を見たとき、それは、目覚めた後の一番元気なキナシベツを見なくてはいけない、見よう。
そう誓わせる瞬間でした。
そう思わせるキナシベツだからこそ、それを知ることができ、そのためになる調査や作業は、非常に充実したものになりました。
また、このキナシベツのすばらしさをいち早く見通し、理解し、守るために具体的な行動をはじめ、そして今までずっと続けてきた榊原さんへは、言葉にできない尊敬の念を抱くに至りました。
榊原さんと一緒に10日間を過ごせたことは、僕にとって、貴重かつ衝撃的な経験となりました。
自然とは何か?自然保護とは何か?守るとはなにか?
様々なことを改めて考えさせられ、自分にとって、ひとつの新しい始まりを得ることができたように思います。
そのような充実した日々をともに過ごし、経験を共有した仲間たちは、僕にとってワークキャンプのもうひとつの大きな収穫です。
彼らとはいつまでも同じ感動を共有していたい、そう思います。
僕もまだキナシベツのすばらしさの片鱗にしか触れていませんが、僕らのようにキナシベツを愛する若者が、一人でも増えて欲しいと切に思います。次にキナシベツをおとずれる日が来るのが、楽しみです。

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