2006年春のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 冨岡優子(玉川大学4年)

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリワークキャンプは、釧路湿原の保全や、タンチョウの保護に協力することを目的として実施されました。

【開催地】 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
(北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南)

【開催期間】 2006年2月23日(木)〜3月1日(水) 6泊7日

【スケジュール】
2/23(木)
鶴居村到着
自己紹介・オリエンテーション
ねぐら調査、粗朶作りについての説明

2/24(金)
タンチョウのねぐら調査
(夜) ボランティアセミナー

2/25(土)
粗朶作り
(夜) 懇親会

2/26(日)
粗朶作り
(夜) タンチョウと自然保護セミナー

2/27(月)
タンチョウのねぐら調査
(夜) リーダーシップセミナー

2/28(火)
野外セミナー
(夜) 野外セミナー振りかえり
    自然保護セミナー

3/1(水)
宿泊所とサンクチュアリの掃除
ワークキャンプ全体の振りかえり
解散

【活動内容と成果】
@タンチョウのねぐら調査
近年、上流での開発による土砂流入によってタンチョウのねぐらである川に中州ができ、ねぐら環境が変化しつつあります。その影響を調べるため、ねぐらにいるタンチョウの数を数える調査を昨年の春に引き続き行いました。
また、ねぐらにいるタンチョウがどの給餌所を利用しているかを調べるため、個体数・飛行ルートの調査も合わせて行いました。
いくつかのねぐらポイントに分れ、タンチョウの数を数えた後、飛行ルート調査を行うため、ねぐら、中継地点、給餌所とポイントごとに人を配置し、トランシーバーを用いて連絡を取り合いながら飛来(飛去)したタンチョウの数、方角、時間を記録しました。
調査は朝の5時から12時まで行われたのですが、とても寒く、冬の北海道の厳しさを身をもって体験することが出来ました。また、タンチョウの姿を間近で見ることが出来るポイントや、遠くを飛ぶタンチョウを双眼鏡で必死に追いかけるポイントなど、ポイントによってそれぞれが違う印象をもったようでした。


A粗朶作り
釧路湿原周辺の森林伐採などの影響により、釧路湿原に山からの土砂が流れ込んでしまうことが起きています。土砂が流れ込むことにより、湿原の環境が変わってしまいます。そこで、土砂の流出を防ぐために、「粗朶」(そだ)と呼ばれる木製の柵をNPO法人トラストサルン釧路(釧路湿原の保全を行っているNPO)が設置しています。
今回は、トラサルン釧路の理事の方々と一緒に、粗朶の一部となる杭や枝を束ねたものの作成を行いました。粗朶は廃材として捨てられていたヤナギなどの木材が用いられています。木材の枝をナタで落とし、その枝を束ねたり、ノコを使って幹を切り杭にしたりする作業を行いました。
初日は理事の方々に教わり、使い慣れないナタやノコで戸惑いながら作業をしていましたが、2日目は作業にもなれみな積極的に自分の仕事を見つけ、作業をしていました。
また、釧路湿原の話や、鹿の食害の話、トラストサルン釧路での活動の話などを伺うことができました。



<<その他の活動>>
(1)セミナー
自然保護、ボランティアに関する基本的な知識を学んだり、考えたりするのがセミナーです。今回はボランティアセミナーやタンチョウと自然保護セミナー、リーダーシップセミナー、自然保護セミナーをおこないました。
ボランティアセミナーでは、今回のワークキャンプで実践するボランティア10ヶ条を皆で決めたり、タンチョウと自然保護セミナーではねぐら調査を行う際のマナーを考えたりしました。
最初は、話し合いをするにも意見がまとまらなかったりしましたが、最後のほうは、それぞれが自分の意見を発言し、人の意見を聞くという姿勢が身についてスムーズに話し合いが出来るようになっていました。

(2)野外セミナー
レンジャーさんに案内していただきながら、早瀬野鳥保護区温根内や、鶴見台、コッタロ湿原、細岡展望台と釧路湿原の周りをぐるっと1週しました。
途中、タンチョウの食害にあっている農家の方のお宅に伺い、被害の実態やタンチョウ保護についてお話を聞くことが出来ました。実際、家の直ぐ近くにタンチョウがいるのを目の当たりにし、自然保護の課題などを考えさせられました。

(3)懇親会
今回は鶴居村のかんきょう会議のメンバーの方々(獣医、酪農家、NGO職員など)が私達の宿泊所に来てくださり、お酒を飲みながら様々なお話を聞くことが出来ました。
普段だったらお話するような機会がない方と交流することが出来、皆それぞれ盛りあがっていました。


【参加者の声】
◆片岡 勇貴(東京農業大学地域環境科学部造園科学科1年)

環境保護って…?

鶴居へ行く前は、初めてのワークキャンプでずっとうずうずしていた、それは早く釧路湿原を見てみたい!タンチョウを見たい!という単純な理由だった。が夏から思っていたその気持ちは、あっという間にかなってしまった。鶴居村に向かうバスの中ではタンチョウを発見、車で少し移動するともう釧路湿原に入ってしまうからだ。だがその感動は今までの何よりも大きかったと思う。タンチョウはとてもきれいでその飛び方は優雅だった。釧路湿原にはその大きさに圧倒された。

一方で酪農家の方と話が出来る機会があって環境保護ということを再び考えさせられた。それは酪農家の方の考えに感動したからだ。今までも自然保護も大事だが自分たちの生活が一番大事だという考えの方の話は何人も聞いたことがある。が、その方はタンチョウから植えた牧草の種を食べられるという被害を受けているにもかかわらず、せっかく「鶴居村」に住んでいるのだからここにきたらタンチョウが見られるというようにしたい。牧草地にして、また湿原のようになってしまった土地はそのままにしておいたらいいと話してくれた。

FAのワークキャンプは自然保護への貢献のために行っているが、酪農家の方たちは自分たちの生活のために湿原を牧草地などにして生活している。人と自然の環境共生に困っているのは間違いなく地元の方たちで、その方がどちらかに偏った考えを持っているのではないことがわかった。そのことが今回のワークキャンプで最も印象に残った。そして今の世の中すべて人間のエゴで成り立っていることに少し憤りを感じた。

最後に、このような素晴らしいワークキャンプを作り上げてくれたチーフ、コーディや北海道のレンジャーさんたちに感謝したい。今回体験できた経験を1つでも多く自分の糧に出来るようにしたいと思う。


◆ S.M さん(筑波大学第二学群比較文化学類3年)

2006年春 FAN鶴居ワークキャンプに参加して

私は、今回のワークキャンプは、FANの活動としても全くの初参加でした。このWCの印象を一言で言うと、『充実』でした。丹頂の調査、粗朶作り、コーディネーターの方が行う各種のセミナー、自炊生活。どれも予想していたよりずっと本格的で、多くのことを考える機会となりました。

WCを通して、大切だと気がついたことが2つあります。1つは「多角的に物事を見ること」、もう1つは、「周りを見て、自ら判断し、行動すること」です。   

1つめは、丹頂の保護の実態をレンジャーさんや野外セミナーで訪れた農家の方のお話をきっかけに思いました。私は今まで、野生生物の保護は、人間の生息地への立ち入りを規制し、数を増やしていくというイメージしか持っていませんでした。しかし、土地の管理問題や、丹頂の数が増えることで、農家の畑や家畜の飼料への被害が発生することなど、一筋縄ではいかない部分を知り、物事には見方によって様々な面があることを感じました。物事を良い方向へ導いていくためには、多くの視点から検討し、バランスを保った最善の策を考えなくてはいけないと思いました。

2つめは、調査や作業はもちろん、合宿所での集団生活全般も通じて感じました。私はWC中、寝不足や寒さによって、集中力や気力が大きく左右されてしまいました。他の人たちが頑張っているのに、周りについていけない場面や、誰かの支持を待つだけで行動できなかった時がたくさんありました。もっと周りの状況をよく見て、自分がどうするのがベストが判断し、行動する力がほしいと思いました。ボランティアに限らず、これからの生活の様々な場面で、この反省を少しずつ生かしていければと思います。

最後に…1週間のWC、すごく楽しかったです☆特に野外セミナーでは、釧路湿原の自然を満喫することができました。また、メンバー全員と初対面だったので最初は緊張しましたが、少しずつ皆さんと話ができて、楽しい時間を過ごすことができました。
メンバーの皆さん、お世話になったレンジャーさん、ありがとうございました。

1.ねぐら調査中。遠くに飛んでいるタンチョウを必死に探します。 2.こんな間近で、タンチョウが飛んでるのを見ることが出来ました♪
感動です!!
3.粗朶つくり。専用の台に枝を乗せて、それを紐でしばって束ねます。 4.タンチョウと自然保護セミナー中。
翌日ねぐら調査で気をつけること(マナー)をみんなで決めました。
5.野外セミナーで行った早瀬野鳥保護区温根内。雪の下から
フッキソウなど植物が見れ、春の訪れを感じることが出来ました♪
6.農家で絞りたてのミルクをもらいました。あまぁ〜ぃ♪♪
7.細岡展望台からの夕日は本当に綺麗…
みんな、圧倒されてました。
8.懇親会。色々な方と楽しくお話することが出来ました♪


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