2006年夏のワークキャンプ

持田保護区、フレシマ保護区

チーフコーディネーター 前田知美(日本大学3年)


今年の夏から新たに根室ワークキャンプが加わりました。
今回はFAスタッフのみで行ってきましたので、ご報告をいたします!

【開催地】(財)日本野鳥の会 野鳥保護区事務所(北海道根室市東梅)

【開催期間】2006年9月8日(金)〜9月14日(木)

【スケジュール】
■1日目(9/8)
  午後 釧路駅集合・買出し
      持田保護区視察
      オリエンテーション
  夜 根室自然保護史セミナー
     スキルアップセミナー

■2日目(9/9)
  午前 持田保護区区画作り(杭の作成)
      植栽作業(ヤナギの剪定)
  午後 フレシマ保護区崩落地内のバラ線囲み作業1日目

■3日目(9/10)
  午前 持田保護区植栽作業(ヤナギ挿し木)
  終日 区画作り(コドラート作り)
  夜 いい所発見セミナー
    しゃべり場

■4日目(9/11)
 終日 野外セミナー
     買出し
 夜 懇親会

■5日目(9/12)
  午前 持田保護区区画作り(コドラート完成)
  午後 フレシマ保護区植生復元作業(ヤナギ採取)
      入り口のゲート補修作業1日目
  夜 mtg技術セミナー
     スキルアップセミナー

■6日目(9/13)
  午前 フレシマ保護区植生復元作業
      (ハンノキ採取・ヤナギと共に植栽)
      入り口のゲート補修作業2日目
  午後 崩落地内のバラ線囲み作業2日目
  夜 現場貢献セミナー
     スキルアップセミナー

■7日目(9/14)
  午前 大掃除
      まとめ

【今回作業した保護区】

●持田保護区
 1987年に日本野鳥の会が購入した野鳥保護区。面積は7.9ha。タンチョウが一つがい繁殖しており、
ここで育った雛は100キロも離れた鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリに飛来しています。
 近年、温根沼に架かる橋の架け替えや漁港の整備などにより潮流の変化が起こり、
保護区の土地が収縮してきています。そのため、タンチョウの営巣が道路側に近づき、
繁殖状況の悪化が懸念されています。

●フレシマ保護区
 2005年に日本野鳥の会が購入した野鳥保護区。面積は203.7ha。根室市の太平洋側に位置し、
五本松川とホロニタイ川の下流域に広がる湿原と湖沼と草原で形成され、
北海道の海岸線の原風景が残されています。
 ここでは植生管理のため、農家の協力を得て馬と牛が放牧されています。
しかし、馬牛の移動や雨により土壌が崩落侵食されているところが確認されており、
今回はその植生復元作業を行いました。

【作業報告】

○タンチョウ営巣場所目隠し植栽(持田保護区)
保護区の土地の収縮により、近年タンチョウの営巣場所が道路側に近づいてきています。そのため、
人によるプレッシャーの軽減を目的とし、保護区内の斜面にヤナギの挿し木植栽を行いました。
植栽したヤナギの本数は300本。今回全員が挿し木が初めてで、挿し木選びから枝を揃えて切るのまで
ドキドキでした。達成感から笑みがこぼれました。
挿し木を完璧に習得して、「挿し木職人」になった気分でした!

○区画作り(持田保護区)
タンチョウの繁殖環境改善のための資料集めと、潮流の変化による地形の変化を把握するため、
保護区内に10m×10mの方形枠(コドラート)設置しました。
長靴と胴長を履いての作業。保護区内は泥濘になっていて、泥だらけになる人も。
タンチョウを近くに臨みながらの、とても印象深い作業でした。

○植生復元作業(フレシマ保護区)
崩落地をバラ線の柵で覆った後、植生の復元を試みました。崩落地内に方形枠をいくつか設置し、
その一部にヤナギとハンノキの苗木を植栽しました。何もなかった崩落地にぽつぽつと緑が。
どれだけ育つか楽しみです。今後、植栽方形枠・植栽隣接枠・無植栽方形枠の3点でどのような変化が
見られるか、定点より記録していきます。

○入り口ゲート補修(フレシマ保護区)
保護区入り口ゲート周辺の草刈りし、もともと張ってあるバラ線を革軍手をして慎重に補修。
タンチョウの抱卵時期にも釣り人や山菜取りの人が侵入できないよう、斜めにバラ線を張っていきました。
さらに上から魚網を被せ、完成!補修した私たちでも苦戦するような、頑丈なゲートができました。

【その他の活動】

☆セミナー
写真のスライドを見ながら保護区について学ぶものや、自然保護について深く考え意見を出しあうセミナーなど、
とても勉強になりました。また、今回は参加者の専門分野や興味を持っている事を10分程度で発表してもらい、
よりひとりひとりの考え方や個性がわかりました。様々な大学・分野の人が集まる、
ワークキャンプならではのセミナーでした。

☆野外セミナー
今回作業した保護区以外にも、根室には保護区があります。レンジャーの方にそこを案内していただいたり、
霧多布ネーチャーセンターに訪れたり、日本最東端の岬に行きました。根室の雄大な自然の景色に圧倒され、
今でもその景色が鮮明に思い出されます。また楽しいだけでなく、根室の開発問題を直に感じ、
考えさせられました。

☆懇親会
地域の方やネイチャーセンターの皆さん、根室で自然保護活動をしている方々などがきてくだりました。
宿泊所のバーベキューサイトでジンギスカンを囲んで語り合ったり、一緒に差し入れのサンマをさばいたり…
根室について貴重なお話が聞くことができました。

【ワークキャンプ全体を通して】
前半は根室特有の「じり(小雨と霧の中間の雨)」に見舞われ大幅な作業変更もありましたが、
和気あいあいとした雰囲気で作業もスムーズに行うことが出来ました。
また、受け入れ先のレンジャーの皆さんも親身になってくださり、予定になかったハンノキの植栽も
こちらから提案して行ったり、「一緒に考えながら作業をする」という姿勢ができ、とても有意義な日々でした。

コドラート作り準備
タンチョウの横で作業
ヤナギ挿し木選び
植生復元作業
入り口ゲート補修作業


【参加者の声】

下平卓也 武蔵工業大学工学部システム情報工学科3年

 根室WCは作業、セミナー、生活、その全てがとても中身の濃いものでした。 WCでの作業はレンジャーの
皆さんたちがWCがあるから用意してくれたというより、WCでできること、WCだからこそ何ができるか。
ということを考えて用意していただいた印象を強く感じレンジャーの皆さんの思いの強さを感じました。
 そんな作業だったからこそ、作業の目的を知り、その作業をすることでどういう効果が得られるのか、
この先の構想を考えながらやることで作業を達成したときの達成感はとても大きなものでした。
 セミナーもひとつひとつがとてもためになるもので、今回のWCを通して自分の良い所、悪い所、
みんなの考え方や思い、様々なことを感じられた今回の根室WCは自分の中でとても大きなものでした。
 大きなものであった分、悔いが残る部分、やり残したような思い、ただ根室をもう一度みたい、
など様々な思いが頭の中をぐるぐるしているので、もう一度根室に行きたいです。 

受け入れ先である富岡さん、有田さん、現地の方、一緒に参加したみんな、サポートしてくれたみんな、
本当にありがとうございました。


「現場を実感!」   
高橋睦 玉川大学文学部リベラルアーツ学科2年

今回、私は根室という地を初めて訪れました。今まで、何度か北海道に来たことがありましたが、
根室という地は、本当に自然があふれていました。
今回行った作業の一つである、持田保護区にて湿原が川にどの程度削られているかを調査するための
区画作りは、貴重な体験となりました☆初めて入る湿原に苦戦しながらも、ロープを50メートルの
格子状に張ることが出来ました。途中、タンチョウの巣を見ることもでき大変感激しました♪
また、フレシマでの植生復元作業では、ヤナギの挿し木について学ぶことが出来たり、
バラ線張りでは杭を打つところからはじめて苦労はしましたが、参加者や受け入れ先の協力により、
無事予定していた作業を終わらせることが出来たので良かったです。途中、車がぬかるみにハマってしまい、
街灯ひとつ無い真っ暗の中、泥まみれになりながら全員で救出作戦をするというハプニングがあったり
なんてことも…(笑)
野外セミナーでは、一日かけて根室の自然を見たり、根室の抱えている問題(道路問題や風車問題など)を
知ることが出来、自然の素晴らしさを実感すると共に自然保護の難しさを改めて実感させられました。
さらに、夜に行われるセミナーは、学生が企画しているものが多くあり、参加者がそれぞれ学んでいる
いろんな分野について知れたり、それぞれの考え方や自然保護に対する思いを聞くことができて、
とても有意義な時間を過ごせました。
最後に、今回根室WCに参加することができて本当によかったです。さまざまな大学から集まった人たちが
一週間という期間を共に過ごすという経験はなかなか出来ません。自然保護というと、理系の人でないと
いけないのかな?という個人的なイメージも払拭できました。普段の生活では体験できないこともたくさん
出来ました。自然保護という現場を実際経験することで学ぶことがたくさんある!ということを改めて痛感した。
そんな貴重な1週間でした★

【ワークキャンプを終えて】(チーフコーディネーター 前田知美)

 初めてのワークキャンプ地での作業。私も含め、参加者も期待や不安を抱えて望んだワークキャンプでした。
しかし、実際雄大な根室の自然を目の当たりにして、そんな不安も一気に吹っ飛びました。
 一週間みんなと一緒に過ごし、それぞれのことをより深く知ることができました。
また、セミナーや生活を通して現場貢献とは、自然保護とは何か、自分には何ができるのかを深く考えると共に、
自分を見直す良いきっかけになりました。最終日の朝、みんな悔し涙を流したのも良い思い出です。
これをバネにして、もっと前進していこうと決心しました。
 地域の方々、レンジャーの皆さんからも多くのことを吸収し、ここでしか得られないたくさんの物を心に残して、
ひとりひとりが大きく成長したと思います。ご協力してくださった方々に、本当に感謝しております。

 私にとって決して忘れることのない、とても印象深いワークキャンプでした。


【最後に…☆】
 根室ワークキャンプ、いよいよ来年の夏から一般募集します!!
あの雄大な景色は実際に見てみないと損ですよ☆根室は絶対オススメです!
ボランティアが初めての方、色んな現場を見てみたい方など、たくさんの方のご参加、お持ちしております♪