2005年春のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 池上佑里(千葉大学2年)

【開催地】 北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南
      (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

【開催期間】 2005年2月23日(水)〜3月2日(水) 7泊8日


【スケジュール】

2月23日(水)
 羽田空港出発
 タンチョウねぐら調査ポイント下見
 オリエンテーション/タンチョウねぐら調査事前勉強会
 アイスブレイク

2月24日(木)
 タンチョウねぐら調査ポイント下見
 タンチョウねぐら調査(午後)

2月25日(金)
 タンチョウねぐら調査(早朝・午後)
 展示物作成
 『トラストサルン釧路』 黒沢さんセミナー

2月26日(土)
 タンチョウねぐら調査(早朝・午後)
 展示物作成
 合意形成セミナー

2月27日(日)
 タンチョウねぐら調査(早朝)
 展示物作成
 自然保護セミナー

2月28日(月)
 展示物作成
 懇親会

3月1日(火)
 野外セミナー
 野外セミナー振り返り

3月2日(水)
 宿泊所・ネイチャーセンター大掃除
 ワークキャンプ振り返り
 釧路空港にて解散


【活動内容・成果】
☆ タンチョウねぐら調査 ☆
 近年、上流での開発による土砂流入によってタンチョウのねぐらである川に中州が
でき、ねぐら環境が変化しつつあります。その影響を調べるため、基礎データとなる
タンチョウのねぐら調査をポイント毎に分かれ行いました。夕方は給餌所からねぐら
に帰るタンチョウの個体数・飛行ルート・降り立ったねぐらの位置を地図に書き込む
作業を、早朝は前日の調査の確認をするためにねぐらにいるタンチョウの個体数を数
えました。
タンチョウの姿を確認して感激も束の間、次々と押し寄せるタンチョウの確認にてん
てこ舞いになるポイントや、タンチョウの飛行が少なく寒さに耐えるポイント等、参
加者1人1人が違った印象を受けていました。

☆ 展示物作成 ☆
 ネイチャーセンターには、今までレンジャーさんが日夜行なっている湿原の保護活
動に関する展示物がほとんどない状態でした。そこで今回私たちは、来館者の方々に
湿原保護の大切さを感情に訴えかける様な展示物の作成に取り組みました。展示コー
ナーの顔となるような大事な部分の展示とあって、1人1人が真剣に意見を出し合
い、みんなの考えがまとまるまで話し合いが続きました。こうして出来上がった展示
物が多くの方の目に留まり、何かを感じてもらえたらと願っています。

☆ セミナー ☆
今回は学生によるセミナーだけでなく、NPO団体『トラストサルン釧路』の代表者
である黒沢さんに来ていただきセミナーをお願いしました。釧路湿原が国立公園にな
る前後に起こった問題や、トラストサルン釧路の活動であるナショナルトラスト方式
による土地の購入、湿原周辺部の森の再生事業等、現地で活動をしている方の貴重な
お話しを聞くことができました。

☆ 懇親会 ☆
 鶴居村で生活をしている様々な職種の方々(獣医、酪農家、エコツアーのガイド、
環境省の職員、写真家、ハンターなど)と今回はねぐらの調査を一緒にやった地元の
北海道教育大釧路校の大学生とともに持ち寄ったおいしいものをつつき、お酒を飲み
ながら語り合いました。同世代もいたことでとても明るい雰囲気で、みんな思い思い
に交流していました。

☆ 野外セミナー ☆
 レンジャーさんに案内してもらって、釧路湿原を1日かけてぐるっと1周しまし
た。午前中は、過去のワークキャンプで継続的にやってきたタンチョウの営巣地復元
事業の現場を訪れました。そこで何とタンチョウのつがいを発見しました。午後は、
地元の農家の方にタンチョウの農作物被害のお話しや電線に引っかかるタンチョウの
実態のお話しを聞いて、下久著呂地区・コッタロ湿原を巡り、『トラストサルン釧
路』の苗育成場を見学し、細岡展望台へ行きました。そこで雪に混じってほんの少し
の間だけ見ることが出来たあの幻想的な夕日にはみんなもそしてレンジャーさんも驚
きの様子でした!


【参加者の声】
●南公一郎(日本大学生物資源科学部森林資源科学科1年)

 「もったいない」これがこのワークキャンプ中に多く感じたことだ。

釧路空港から降り、雪が降りしきる中、給餌場から多くのタンチョウを見た。思った
よりもかなりの大きさである。その大きさのためかもしれないが、ペアーでいる時や
足で顔を掻くとき、飛行中に予想外もしない動きをするときにとても人間らしさを感
じた。美しさとともに見ているものを夢中にさせるものがあった。このタンチョウが
今いろんな危機にさらされていることを知った時、もし絶滅してしまったらこの生き
物を将来子供たちが見ることができなくなるし、日本を代表する鳥がいなくなるわけ
だからとても「もったいない」ことである。

初めての冬の北海道の暮らしで水道管の水が凍るのを体験した。もちろんすぐにはお
湯も出ないし部屋は暖かくはならない。火の存在はかけがえのないものであり、普段
生活していて無駄に光熱にかけているエネルギーがいかに「もったいない」ことかを
実感した。しかし、住めば都である。帰るころになると凍結防止に水道管を閉めるの
にも慣れ、多少の寒さにもからだが適応できるようになった。懇親会では多くの方と
話す機会があり、地元で酪農をしていらしている方の話を聞き苦労話を聞きながら、
捕ってきてくださった鹿肉をご馳走になった。これであとは「〜んだべさぁ」などと
返せばもう立派な住民の一員である。

「もったいない」ことやはりそれは参加者や協力してくださったレンジャーさんに病
人が出たことだろう。自分を含め期間中、終わった直後に具合が悪くなったら貴重な
体験も半減してしまう。しかし、これも自然の猛威には人間は太刀打ちできないこと
を身をもって体験させてくれたいい体験であった。このワークキャンプに協力してく
ださったレンジャーさん、地元の方々、一緒に参加したみんな、そして北海道の自然
には多くのすばらしい体験をさせていただいたこと本当に感謝しています。


●辻知香(山口大学農学部獣医学科2年)

自然保護活動に従事したい―漠然とした思いを持っているだけで、今まで実際に何ら
かの行動を起こしたことが無かった。そんな状態から一歩踏み出そうと思いこのワー
クキャンプに参加することにした。振り返ってみて、実り多き8日間だったと感じて
いる。

 忘れられない光景がいくつもある。特に段々昇ってくる朝日を背に川霧の中に浮か
ぶタンチョウの姿を目の当たりにした瞬間・・・言葉にならなかった。タンチョウねぐ
ら調査は、自然の美しさを肌で感じることができた貴重な体験だった。同時に自然・
野生生物相手に活動する大変さを知った。すぐには結果の出ない地道な調査、タン
チョウの保護と農業被害との間の葛藤などの障壁。それでも活動を進めていけるの
は、心からタンチョウを湿原を守りたいと願う人々の気持ちがあればこそだと実感し
た。

もう一つ心に残っているのが、サンクチュアリの展示物作成作業だ。展示物は最高に
良いものに仕上がったと感じている。全員が大満足できたのは、12人で作成に至るま
でとことん話し合ったからだろう。何かを作るに当たって、ここまでじっくり考え、
意見を交わし合ったことは無かった。この話し合いを通して、自分の考えを自分の言
葉で周りの人達に伝えることがどれほど重要なのかを学んだ。

 私の初めての活動が、この鶴居でのワークキャンプで本当に良かった。レンジャー
さんをはじめ地域の方々、そして11人のメンバーに出会えたことに感謝している。人
との出会いは素晴らしい!と再認識した。
これからも今回で得たものを糧にして、自然や人との新たな出会いを求めていきた
い。


☆ はみ出しと様子 ☆
・釧路の和商市場でMしゃがクジラ肉を食べて大暴れ?!
・ねぐら調査の終了時、トランシーバー越しの「良かったね♪〜」の掛け合いは心温
まったよね。
・タンチョウの絵を担当したA画伯は、5分作業すると25分は休憩する気分屋でツ
ル班は常にはらはらしていたらしい。
・露天風呂で髪がパリパリに凍るのを体験!!男子達はみんな雪の中にダイブしたっ
て。
・Kちゃは残った味噌汁を鍋ごと食らってた!!
・全員マスクでの野外セミナー。これだっていい(?)思い出の一つだ。