2004年春のワークキャンプ

キナシベツ自然保護区

チーフコーディネーター 和気 尚美(東洋大大2年)
(写真は、しばらくお待ちください!)

<開催地>
 (社)日本ナショナルトラスト協会・キナシベツ自然保護地区
  (北海道白糠郡音別町直別)

<開催期間> 2004年2月20日(金)〜2月29日(日)9泊10日

<スケジュール>
 

2月20日(金):現地到着、開会式、オリエンテーション、アイスブレイク、
         セミナー『キナシベツの自然保護の歴史』
  21日(土):自然史調査@(外でデータ収集)
         セミナー『オオワシ・オジロワシ生息調査事前勉強会』
  22日(日):オオワシ・オジロワシ生息調査
                    セミナー『自然保護セミナー』
  23日(月):産業遺産保全への取り組み
  24日(火):野外セミナー、野外セミナー振り返り
  25日(水):アオサギコロニー調査
         アオサギ博士:松長さんによる『アオサギセミナー』
  26日(木):自然史調査A(外でデータ収集)
         ナイトハイク
  27日(金):イグルー(イヌイットの住居)作り
         懇親会(トラストの家にて)
  28日(土):自然史調査B(室内で環境実態図作成)、
         餅つき、カンジキ作り
         セミナー『自然保護シミュレーション』
  29日(日):WC振り返り、大掃除、閉会式、現地解散

<活動内容・成果>

●自然史調査●

キナシベツ自然保護区の自然状態はどうなっているのか・人の影響が自然へどの程度及んでいるのか・今後予想される自然破壊は何か…というような事を、見てすぐ解るようにする為、自然史調査を行ない、環境実態図にあらわしました。

対象区域を歩き、データを集めるのに2日、そのデータを地図にあらわしていく作業に1日、と計3日行いました。カンジキをはいて雪の中をザクザク歩いてデータ収集をするのはとても楽しく、時間が経つのがあっと言う間に感じられました。


室内でのまとめ作業は、どうすれば地図を見る人や、次回の調査を行なう人にわかりやすいかを考えるのがとても大変でしたが、最後には環境実態図という、1つのカタチに残せてよかったです。


●オオワシ・オジロワシ生息調査●

鉛中毒の影響がオオワシ・オジロワシへどの程度及んでいるのかを知るための調査です。

北海道・東北を中心に、一斉調査として行なわれました。みんな、オオワシ・オジロワシについてよく知らなかった為、調査の前の日には事前勉強会を行ない、張り切って調査当日に望みました。

が、しかし…当日は生憎の吹雪で、視界がとても悪く、結局1羽も確認できずに終わってしまいました。残念無念!しかし、その後WC中に何度かオオワシ・オジロワシを観る機会があり、勉強会の甲斐あって、みんなちゃんと確認できるようになりました。

この調査では、天候によって大きく左右される調査の難しさを垣間見た気がします。


●産業遺産保全への取り組み●

キナシベツ自然保護区内にある、牛舎やその他昔の酪農風景を後世へ産業遺産として残そう!という、現地の榊原さんの考えを聞き、その考えに対して私たち学生はどう思うか?

FAネットワークとしてはその計画にどう関われるのか?を、榊原さんを囲んでみんなで話し合いました。途中、話がかなりもつれましたが、最後には学生みんなの案を一つの形にまとめ、榊原さんに提示できたので良かったです。


●アオサギコロニー調査●

カンジキを履いてカラマツ林の中のアオサギのコロニー(集団営巣地)へ行き、巣の数をかぞえました。結果は…全体で71個でした。

一昨年が87個、昨年が78個だったので、数だけをみると年々減少している事がわかりました。調査の後、トラストの家で、アオサギ博士の松永さんが私たちにアオサギセミナーを行なってくださりました。

映像を使って解りやすく丁寧に教えてくださった為、私たちは松永さんのアオサギの話にどんどん惹き込まれていきました。


●野外セミナー●

クロスカントリーを使って8時間キナシベツを周り、たーっぷりキナシベツの自然を満喫しました♪ヤチボウズの上を歩いたキナシベツ湿原。氷が溶けかかっていて、とってもハラハラしたポンキナシベツ川。

キナシベツ全体を見渡しながら昼食をとった岬。トガリネズミと追いかけっこをした砂浜。何度も転びながら通った、神秘的な雰囲気のする原生林。みんな五感を研ぎ澄ましてキナシベツの雄大な自然を感じ取りました!


<参加者の様子>

今回のワークキャンプは男4名、女6名の計10名によって行なわれました。

ワークキャンプ初日からみんな和やかな雰囲気で、とても和気藹々としていました。調査の時のチームワークも良く、しっかり協力して行なえたと思います。みんなしっかりと自分の意見をもっていて、『産業遺産保全への取り組み』の話し合いや、セミナーの時など、積極的な話し合いがなされていました。その話し合いは深夜まで続く事が多々あり、自然保護について・お互いの専門分野について・将来について等々…深く語り合って互いを理解し合えた様でした。深く語り合えたこの絆をいつまでも大切にしたいと思います!


<参加者の声>

★池上佑里(いけがみ ゆうり/千葉大学園芸学部緑地環境学科1年)

昔から自然保護活動に興味があり、そのようなことがしたいと思って大学に入ったものの、気づくと何もしないで一年が過ぎようとしていました。これではいけないなと思っている時に友達から情報を得て、このワークキャンプに参加することになりました。

ワークキャンプは初めてでしかも二日目からの参加だったし、冬の北海道はどれだけ寒いのか見当もつかなかったため、不安はありましたが、いざ合流すると皆温かく迎えてくれてすぐ活動に入ることができました。私は以前森林ボランティアで植林などの作業はしたことがありましたが、動植物の調査はしたことがなかったのですべてが新鮮で、新しい発見の連続でした。

特に印象に残っているのが、8時間ほど雪の中をクロスカントリーで歩いた野外セミナーです。雪が積もっているため普通では入れない湿原の中を歩いたり、凍っている川を渡ったり、丘を登ったりと全身を使ってキナシベツの自然を体験することができました。ただ歩くだけでなく、双眼鏡を使って今飛んでいるのは何の鳥か友達から教わったり、生えている植物のわずかな根拠からその植物が何であるか特定したり、動物の足跡から行動を推測したりと、五感と頭をふるに活用できたことで、より充実感を得ることが出来ました。

このワークキャンプに参加して、じかに自然にふれることであらためて自然の大きさを感じました。また環境保護に関心のある仲間でセミナーをし色々話しあうことで、自分では考えなかった意見を聞いたり、違う専門の分野からの視点を知ることができ、とてもいい刺激になりました。世話人である源さんのキナシベツの自然に対する熱い思いや現地の人の理解を得てこそ保護活動に意味があり、そのために人とのふれあいを第一に考えているところなど深く感心しました。

やはり自然保護活動をする際大事なのはどの程度人が関わるのかだと思います。今回私達の活動は調査が中心だったので、すぐに目に見えて自然が良くなるわけではありませんでした。けれども、長いスパンで見た時そのデータ−が意味あるものだと知って、自分もキナシベツの自然保護に一役買ったかなと思います。これから自然保護について色々勉強して、はやくまたキナシベツに行きたいです。



★小澤成美(おざわ なるみ/東京農業大学農学部農学科1年) 

今回初めてワークキャンプに参加したんですが、率直に感想を述べると、とっても楽しかったです!そしていろいろな面で勉強になりました。

私は大学では農学を中心に学んでいますが、他学科聴講で動物系の授業をとり、植物だけではなく動物にも興味を持つようになりました。そのこともあり、原生林を観れたり、アオサギコロニー・ワシ類の調査を行うキナシベツワークキャンプに参加しました。参加する前はボランティアで調査やセミナーなどをすることを目的に行くから堅いイメージがあり緊張していましたが、実際行ってみると、参加メンバーはみんな楽しくていい人で和気あいあいとした雰囲気で緊張もなく参加できました。

今回のワークキャンプで私は鳥に興味を持つようになりました。泊まったトラストの家から見た鳥はどれも美しく、愛くるしい鳥ばかりで、いままでじっくり鳥を見たことがなかった私をとりこにさせました。また、野外セミナーでみたオオワシ、オジロワシ、トビ、フクロウ、ノスリなどの猛禽類はすごくかっこよくて観かける度に双眼鏡でじっくりみて観察し、その姿に惚れました。初めて見た鳥は数多く、『鳥』という点だけでも今回のワークキャンプに参加してよかったなあと思うほどです。

私は今回のワークキャンプで学んだことが多くありすぎて文字でうまくまとまりません。北海道はとても寒いけど人々はとても暖かいことや、原生林のハンノキとヤチボウズが広がる景色やその中をクロスカントリーで探索したこと、雪と海との景色の美しさやキナシベツの夜空を飾る星たち、おいしいジャガイモやししゃも、牛乳や初めて食べた牛乳豆腐の味、さらさらした雪の感触。本当にたくさんのことを学び、いっぱい色の濃い思い出ができました。帰る日に寝坊をし、空港まで送ってくれたげんさんの優しさや、まこさんが作ってくれたおにぎりがすっごくうれしかったこと、みんなが書いてくれた手紙を飛行機の中で読んだことも一生忘れないと思います。最後の最後までいろんなことがあって、すごく濃い11日間となりました。

ワークキャンプでは植物や動物や自然環境のことを学べるだけでなく、現地の人や参加したみんなからいろいろなことを知ったり、発見したり、学び取ることができ、私は参加して本当によかったなあと思います。ぜひまた参加したいです☆


<はみだし>

・現地で私たちを受け入れてくださった榊原源士さん(通称:源さん)はとーってもイイヒト☆源さんは何も悪くないのに、口癖でついいつも「すんませーん」と謝ってしまいます。その「すんませーん」に源さんの人柄の良さが全てにじみ出ている感じです。

・26日夜、ナイトハイクをやりました。クロスカントリーを履いて、月と星の明かりだけの世界で、各自、キナシベツの星空&夜の自然の光景を満喫しました。夜中に一人ぼっちで雪の中を移動するのはかなりドキドキで、後から話を聞くと「泣きそうだったよー」とか、「実は怖くて腰を抜かしちゃったよー」と言っている人がたくさんいました。
とーってもドキドキの体験でした!!

 ・28日、雪上で餅つきをしました♪想像以上に杵が重くて、なかなか上手くつけませんでした…。でも、つきたてのお餅はとっても美味しくて、みんなニコニコしながらほおばっていました!雪の上でつくお餅……最高です☆