2004年夏のワークキャンプ
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
チーフコーディネーター 赤瀬悠甫(横浜国立大学3年)
(写真は、本文の下にあります!)
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリワークキャンプは、釧路湿原の保全や、タンチョウの保護に協力することを目的として実施されました。
【 開催地 】 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
(北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南)
【 開催期間 】 2004年8月12日(水)〜19日(水) 7泊8日
【 スケジュール 】
8月12日(水)
現地へ移動後、自己紹介とオリエンテーション
8月13日(木)
作業 : タンチョウ生息環境復元域での巣の調査
セミナー : 合意形成セミナー
8月14日(金)
作業 : 倉庫解体
8月15日(土)
作業 : 保護区での看板たて
セミナー : 自然保護シュミレーション
8月16日(日)
作業 : 倉庫解体・木道作成
セミナー : レンジャーさんセミナー
8月17日(月)
作業 : 木道作成、移入種駆除
≪地元の方々との懇親会≫
8月18日(火)
≪野外セミナー 〜釧路湿原ぐるっと一周〜≫
8月19日(水)
宿泊所とサンクチュアリの大掃除
セミナー : 野外セミナー振り返り
セミナー : ワークキャンプ全体の振り返り
解散
【 活動内容・成果 】
@ 給餌倉庫解体&木道作成
昔、給餌用のデントコーンをしまっていた古い倉庫が、去年の雪で潰れてしまいました。業者に撤去を頼むと経費がかさむため、私たちが倉庫の解体・撤去作業を実施。解体された廃材の一部を使って、ネイチャーセンター前に木道も設置しました。
A 保護区の看板立て
野鳥の生息地の保全を目的として、日本野鳥の会では、買い取りによる野鳥保護区の拡大を行っています。しかし、現状では保護区の境界を明確に示すものがありません。一般の人やハンターが間違えて入ってしまわないように、「立入禁止」の看板を9本、ソウサンベツ野鳥保護区に設置しました。
B 巣の調査
今年もタンチョウの営巣が確認された温根内早瀬野鳥保護区にて、巣の位置や巣材、周辺植生等の調査を行いました。
C 移入種駆除
在来種のニホンザリガニをおびやかす、移入種(外来種)ウチダザリガニを捕獲しました(=ザリガニつり)。
≪その他の活動≫
[1] セミナー
夜、夕食後に行う勉強会のことです。自然保護、ボランティアに関する基本的な知識と、実際にボランティア活動をしていくうえでの技術を学ぶ場です。今回は合意形成セミナーや自然保護シュミレーション、レンジャーさんセミナーなどをおこないました!
[2] 野外セミナー
丸1日かけて、レンジャーさんに案内してもらいながら、釧路湿原をぐるっと一周しました。
鶴居村にあるもうひとつの給餌場の管理人渡邊トメさんからは観光客のマナーについて、タンチョウの食害にあっている農家の方々からは、被害の実態を聞き込みます。また、キラコタン岬では釧路湿原に注ぐ川の水源で湿原の奥深さを感じるとともに、久著呂川で自然再生事業の実態を見つめました。
[3] 懇親会
ワークキャンプ終盤の夜、鶴居村の方々が懇親会に来てくださいます。獣医さん、観光客向けのレストラン経営者、環境省職員、酪農家のおじちゃん、ハンター、エコツアーガイド、ネイチャーセンターの自然観察指導員などなど。人生談に乾杯♪
【 参加者の声 】
●越阪部裕司(千葉大学2年)
今回初めてワークキャンプに参加させてもらったわけだが、ほんの10日程度の短い期間にもかかわらず、とても充実した時間を過ごすことができた。釧路で経験したことはとても貴重なことばかりであり、そして多くを考えさせられた。
最初はキャンプの内容もさながら、他のメンバーは全く知らない人ばかりなのでそこに馴染めるか気になったが、そんな些細な問題はレンジャーさんのトークでさらりと解決。そのうえ、皆で協力しての作業や食事をすることですぐに馴染んでしまった。日がたつにつれてメンバーも自然体になっていき、もはやある意味家族みたいなもんである。そのため生活面でもいろいろと楽しむことができた。また、移動中には以外にも多くのタンチョウと出会うことができ、なんどもシャッターをきった。
実際の活動は、タンチョウの巣の調査で湿原の中に踏み込んでは肌で水の冷たさを感じ(いや、ほんとに。)、保護区の看板立てでは小雨の中支柱を打ち込みつつ、保護区の中まで入ってきてしまう来訪者のマナーの悪さを感じ・・・そして、倉庫の解体&木道の作成で、はじめは「終わるのか、完成できるのか」と言いたそうな顔で作業をしていたメンバーが、木道が出来上がって満足そうな顔をしたときには、心から喜びを感じた。
しかし、一番印象に残っているのは野外セミナーだ。1日かけて湿原を1周し、色々な人の話を聞き、色々なものを目にした。その中でも、農家の方の「自分たちからすればタンチョウも害鳥にすぎない」というお話はショックでもあり、納得もさせられた。極端に言えば今までは「どうにかしてタンチョウを保護しなきゃ」といったような考えすらあったが、決してそれが正しいことではないという生の声を聞き、自分の視野の狭さ・視点の貧しさを思い知らされた。
そして、そんなお話を聞いたあとに一面の湿原の平野を見渡したとき、あまりの美しさに言葉を失いつつも、少し複雑な気持ちになった。
全体を通して、かなり内容が濃く、むしろあわただしいくらいであったが、それだけにかなり多くの体験をすることができとても満足のいくものとなった。今回学んだことはこれからの学習に大いに役立つと思う。そして、できることならぜひ冬の釧路にも遊びに行ってみたいものだ。
●宮田紗希(日本獣医畜産大学1年)
1m以上もある、先の見えない草木の中を必死になって歩く。足元は一歩出したら次の足をすぐに出さないとズボズボと埋まってしまう。枯れ葉や木のクズが服の中に入り込んで体がかゆい。胴長靴はムレて気持ち悪い。変な虫がそこらじゅうにいるけれど意地でもブユやアブのような毒虫なんかに喰われたくない。花粉が飛んでいるせいか、鼻水が止まらない。こんな最悪な所。ここを遠くから見た。
生き生きとした黄緑色は鮮やかすぎてまぶしい。柔らかくふかふかした絨毯のように優しい。その上を川は大蛇のようにゆったりと力強く行く。そして絨毯の感触を楽しむためにこれでもかといわんばかりに蛇行する。――これが釧路湿原。
夜、空を見上げた。夜空の色は漆黒なんかじゃない。星の数が多すぎるのか、月明かりのせいか、深く澄んだ紺色だ。星々は宝石のようにキラキラと光っていてなんかいない。無数にある全ての星は何の迷いもなく真っすぐに私の目の中に飛び込んでくる。「あっ!流れ星!!」 でも願い事を言う暇なんてない。これら星の光はいったい、いつの時代に放たれた? 湿原の真ん中で車を降りだまって空を見上げる人間達を、見ていた鹿は何を思っていただろう。
私は今回のワークキャンプで自然の持つ測り知れない力を体で感じた。美しくもあり厳しくもある自然。私が感じた自然がいつまでも人間の手によって破壊されないことを強く願わずにはいられない。
ワークキャンプの始まり。音成レンジャーの真剣な説明。 | 「タンチョウの巣から、卵の殻が出てきたヨ!」 |
立てたぜ!看板以上に目立つレンジャーさんたち♪ | 倉庫解体。いはやは、なかなか木板がはがれないのです。 |
廃材の長さを揃え… | 素敵な木道を完成させました! |
地元の方との懇親会!お酒とともに、熱いトークが繰り広げられます。 | 釧路湿原の奥地。 人っ子ひとりいない秘境の川は、澄み切っていました。 |