2004年夏のワークキャンプ
チーフコーディネーター 石田 亜美(麻布大2年)
(写真は、本文の下にあります)
●開催地●
(社)日本ナショナルトラスト協会・キナシベツ自然保護地区
(北海道白糠郡音別町字直別)
●開催期間●
2004年8月23日(月)〜9月1日(水)9泊10日
●スケジュール●
8月23日(月)羽田空港出発!
開会式
オリエンテーション
「キナシベツ自然保護史」(担当:榊原さん)
8月24日(火)道具の説明(担当:榊原さん)
乙部浜のごみ拾い
駅前広場の整備
自然保護セミナー(担当:金内)
8月25日(水)駅前広場の整備
ローカルセミナー(担当:赤瀬)
8月26日(木)湿原と町道を仕切る柵作り
野外セミナー(担当:赤瀬)
8月27日(金)湿原と町道を仕切る柵作り
海辺で環境哲学について語ろう
8月28日(土)野外セミナー
野外セミナー振り返り(担当:金内)
8月29日(日)湿原と町道を仕切る柵作り
懇親会 ジンギスカンパーティー♪
8月30日(月)魚の遡上調査
自然保護シュミレーション(担当:石田)
8月31日(火)トラストの家大掃除
9月1日(水)ワークキャンプ振り返り(担当:石田)
●活動内容・成果●
☆ 湿原守ろうバラセン(有刺鉄線)張り
キナシベツ自然保護地区を横切る町道のすぐ隣には、豊かな植生が見られタンチョウの営巣地にもなっている湿原が広がっています。しかし、貴重な植物を盗掘しようとする人やカメラマンが湿原に侵入しており、これを防ぐために、FAのワークキャンプの活動のひとつとして、バラセン張りを行ってきました。今回は古くなったバラセンを一部取り除き、新しく張り替えるとともに、さらに延長して、計200メートルの柵を完成させることができました!バラセンは視覚的な効果が大きいので、町道を通る人から見える位置にバラセンを張るようにしました。バラセンは危険なのでみんな皮手袋をして作業しましたが、げんさん(現地管理人の榊原源士さん)は軍手だけでした。なぜかげんさんは手も強いのです!
☆ 駅前広場の整備
駅前広場とその先に広がる湿原の間に木の柵を作りました。湿原と駅前広場の境をはっきり示すことによって、地元の人や直別駅を訪れる多くの人に、キナシベツ湿原の存在とそのすばらしさを知ってもらい、自然保護への理解を求めるという目的があります。今後も湿原に木道を作るなど、駅前広場の整備を続けていく予定です。
最初はみんな慣れない手つきでスコップやペンチ、金づちを使っていましたが、げんさんに道具の使い方を教わりながら、最後には丈夫で立派な柵を完成させることができました。どんな道具も使いこなしてしまうげんさんにはびっくりです!直別駅が、きれいで温か味のある駅に生まれ変わった気がしました♪
☆ 浜のごみ拾い
ごみの種類として、ペットボトル、ビニール、弁当の容器など、浜を訪れた観光客が捨てていくごみを想像していたのですが、衣類やタイヤ、ストーブなどの生活ごみが多くびっくりしました。近くに住む人が生活の中で出たごみを浜に捨てに来ているのです。ごみを捨てる側の意識に問題があると同時に、ごみの回収制度についても早急に対策が必要と感じました。
ごみの量は、半日でトラックの荷台がいっぱいになるほどでした!ごみのある所にはまた人がごみを捨てていく。悪循環が起こらないために、目立つごみは特にしっかり拾いました。
☆ 野外セミナー
約12km、1日かけてキナシベツを一周しました。急な崖を命がけで登って、丘の上から一面に広がる空と海を全身で感じて、原生林で見つけたくまのねぐらにギュウギュウと全員で入って、湿原でたくさんの植物を見て名前を覚えて、・・・五感をフルに使って雄大なキナシベツの自然を感じました!また湿原では貴重な植物が盗掘された跡がいくつもあり、人の心無い行為にも気づかされたのです。
☆ 魚の遡上調査
直別川で魚の遡上を調査して、河川の健康状態を調べます。寒い中、つなぎのまま川に飛び込み、川の淵を棒でつついて魚を追い込み網で引き上げます。家畜の糞尿が川に直接流れ込んでいる場所では、酸欠につよい魚であるウグイばかりいて、異常な状態になっていました。この調査は毎年行っている継続事業なので、データを積み重ねることによって、河川の健康状態の変化を知ることができます。上流地点ではめったに見られないオショロコマも網にかかり感激しました。本当に楽しくて、本当に寒かったぁ・・。
<参加者の様子>
女子8人、男子4人の12人で定員ギリギリ!人数が多い分、みんなのパワーがあふれる10日間でした。ひとりひとりワークキャンプに参加した理由も、大学で学んでいる事も、興味の方向も、物事の感じ方も違うけれど、気持ちはひとつ!違うからこそ、いろいろな意見が飛び交って、お互いに刺激を受けて、大きな力になったのだと思います。
<参加者の声>
「キナシベツで得られたもの」 鈴木真衣(玉川大学農学部生物資源学科3年)
キナシベツワークキャンプ。大げさな言い方になってしまうかもしれないけれど、思い出すと涙が出るぐらい私にとってとっても大切な場所。たくさんのことを教えてくれた、たくさんの考えるきっかけをくれた場所。本当にキナシベツからはかけがえのないたくさんのものをもらった。キナシベツワークキャンプという言葉を聞くと、参加したみんなはどういう事を思い出すんだろう。ゴミ拾いをしたこと?バラ線を張ったこと?柵を立てたこと?それともセミナーかな?初めて実際に体を動かして自然保護活動をやって、自然保護活動って何だろうと考えさせてくれた。私ももちろん実際の活動も思い出すけど、キナシベツワークキャンプという言葉を聞くと、真っ先に思い浮かぶのは真っ青でどこまでも続く広い空なんだ。きらきら光る白い砂浜、一面に広がる牧草地、たくさんの色を持ってる山、海の音、風の音、木々が揺れる音、虫の鳴き声。頭より自分の五感で自然や物事を感じ取る素晴らしさを教えてもらった。他にもたくさんのものをもらったんだ。信念を持って実際に取り組んでる源さんに出会えた事。考えてるだけではなくて、実際に活動することの大切さを教えてくれた。また同じ事に興味を持っている仲間との意見の言い合い。自分の考えを伝えることの難しさ、大切さ。問題点を考えること、見つけ出すことの難しさや大切さを教えてもらった。考え方や感じ方が違くても、一つの気持ちがあればみんなでやっていける。色んな考えがあるからこそ、一つにまとまることが出来るんだってことも教えてくれた。キナシベツで出会えた人々はみんな暖かかった。本当にキナシベツはたくさんの事を教えてくれた。キナシベツにいる時はどこにいるときよりも自分らしくいれた気がした。私は確かに幸せを感じたんだ。キナシベツで得られたもの。それは本当にたくさんあったけど、一番は情報に縛られず五感を使って感じる事がいかに大切なのかということを教えてくれたこと。そして改めて私は自然が好きなんだ、守りたいなと思わせてくれた。ありがとう、キナシベツワークキャンプ。私はあなたからこんなにも大切な宝物をもらいました。
「2004年キナシベワークキャンプ」 稲垣 宏一(東京理科大学理工学部工業化学科2年)
キナシベツでの10日間は毎日が新鮮で、僕にとってとても貴重な経験となりました。以前から自然保護に関わることをやってみたいと考えていたのですが、実際に保護活動に参加するのは今回のワークキャンプが初めてでした。そして今、このワークキャンプを終えて、はじめての活動がこのキナシベツワークキャンプで本当によかったということが素直な感想です。というのもキナシベツの自然は本当に最高で、自然の大切さを再確認する事ができたし、今回キャンプに集まった仲間達や、僕らがお世話になったゲンさんをはじめとするたくさんのすばらしい人達と出会うことができたからです。夕陽に照らされる湿原やその湿原の上を飛ぶ鳥たち、崖の上から眺めた景色などの一瞬一瞬の風景が自然の尊さ、すばらしさを僕に改めて伝えてくれて、そしてみんなからは毎日のセミナーなどを通じて新しい視点や多くの刺激をもらいました。
また野外セミナー、柵作り、バラ線はり、ゴミ拾い、遡上調査、海岸での昼寝タイム、ナイトハイク、夜のセミナー、すべてが充実して楽しかったです。その一方で、人間が自然にたいしてどれだけ心ない行動を普通に行っているかという現実とか自然保護の現場の大変さや他からはわからないような苦労とかをこれらの作業から学びました。
これら、今回のワークキャンプで得ることのできた経験や自然保護に対する新たな視点などを生かして、今後も今の自分にでもできる保護活動に積極的に参加していき、そして将来、環境問題解決にしっかりと貢献できるような能力を今から身につけていきたいと感じました。
最後に一言。キナシベツワークキャンプはサイコーです!!(>∀<)/
参加者が作った詩も一部ご紹介します。
「キナシベツ」 小松亜美
ここは 広いよ
空が 海が 緑が
ここで 広くなれるよ
瞳が 心が 人の輪が
すべてが 広いよ
キナシベツはそんなところ
海岸に捨てられたタイヤの数々。トラック一杯分のゴミを拾う。 貴重な植物を守るため、人の侵入を防止するバラセンを張る。 丸太と丸太を針金で縛る。なかなか、コツが必要な作業だ。 おいしい晩ご飯! 海岸近くで小さな焚き火を起こす。ポツポツと語り合う、幸せなひととき♪ 野外セミナーで記念写真!すぐ後ろに流れるのは直別川。