2003年春のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 山崎麻里(東京大学4年)
(写真は、本文の下にあります!)


<開催地> (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南

<開催期間> 2003年3月6日(木)〜12日(水)  6泊7日

<スケジュール>

3月6日=現地へ移動、オリエンテーション、自己紹介

セミナー「ハンノキ伐採について」、アイスブレイク

  7日=セミナー「タンチョウについて」、タンチョウの標識調査・カウント

タンチョウティーチャーズガイド作成についての説明&実演

        セミナー「環境教育」

  8日=環境教育アクティビティの作成、セミナー「野生動物保護」

  9日=ハンノキ伐採、セミナー「自然保護」

 10日=朝のねぐら調査、環境教育アクティビティの作成

地元の方との交流会&環境教育アクティビティ試行

 11日=野外セミナー、打ち上げ

 12日=大掃除、野外セミナー振り返り、ワークキャンプ振り返り

<活動内容・成果>

●タンチョウティーチャ-ズガイド用環境教育アクティビティの作成&試行

今回のメイン作業として、小学校の教師用教材「タンチョウティーチャ-ズガイド」に掲載する環境教育アクティビティを考えました。2グループに分かれて、子ども達がゲームなどで楽しくタンチョウについて学べるものを作りました。全部で3つのアクティビティが完成!「タンチョウさんが転んだ」「なわばり争奪戦」「電線事故ゲーム(仮称)」。地元の方との交流会で試行したのですが、真剣勝負となり、大変盛り上がっていました。

●ハンノキ伐採

タンチョウの好むヨシ原にハンノキが繁茂すると、タンチョウが営巣しなくなります。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは、1999年からタンチョウの生息環境であるヨシ原の復元のためのハンノキ伐採実験を行っていて、ワークキャンプで毎年お手伝いをさせていただいています。昨年、とうとう伐採地でタンチョウがひとつがいが営巣しました!!今回は最後の年として切り残しを伐採する予定でしたが、天候に恵まれず、中止に。残念でしたが、レンジャーさんの御好意で、現場まで連れて行っていただきました。スノーシューで雪の湿原を歩いて行き、ハンノキの萌芽の切り取りも行うことが出来ました。作業後、これまでの作業の成功を祝い、また、皆でタンチョウを想って黙祷しました。

●野外セミナー

丸1日かけて釧路湿原をぐるっと一周しながら、タンチョウや釧路湿原で起きている問題を自分達の目で見てきました。色んな立場の方(タンチョウ給餌人、タンチョウの食害を受ける農家の人、など)にも直接お話を伺うことが出来ました。温根内ビジターセンターの若山さんの案内で雪の湿原をクロスカントリースキーで散歩したり、環境再生事業が行われている現場を見たり、トラストサルン釧路による植林地を見学したりもしました。最後は釧路湿原に沈む夕日に、一同静かに見入っていました。

<参加者の様子>

最初は大人しかったメンバー10人。だんだん打ち解けていくと同時に賑やかになってきました。また、皆がお互いの様子に配慮し、仕事を率先して行っていました。毎日の過密スケジュールで疲れながらもナチュラルハイな状態で、夜遅くまで熱く語り合っている人たちも。ワークキャンプ後、進路を考えるのに役立った、これからも自然保護に関わりたい、などの感想が聞かれ、皆モチベーションが上がっていました!

<参加者の声>

●有馬純一(信州大学2年)

 ワークキャンプに参加して、自分の期待以上のものが得られたと思う。
 まず、気兼ねなく話せる仲間ができたことである。夜のセミナーやその後の酒宴では、相手の意見を聞き、自分の意見を述べることで、自分の考えの位置(立場?)というものが認識できた。また、自分の中にあった疑問も、解けたものもあれば、やっぱりどこか納得のいかないものもあった。いずれにしても、考えをぶつけ合う経験をあまりしたことがなかったので、新鮮だった。
また、現地へ行って、現地の方の生の声を聞けたことはとても大きかった。例えば、自分の中では、レンジャーさんというのは、「保護ありき」の立場の人だと思っていたのだが、話を聞いてみるとどうやらそうではないらしい。レンジャーさんも矛盾や疑問を感じながらやっておられるということに、正直、おどろいて、なんかうれしくなった。

大自然の中での1週間は本当に大きな糧となった。すべての出会いに感謝!
●矢野初美(東京大学3年)
ワークキャンプに参加して以来、テレビの天気予報でも無意識のうちに釧路の天気をチェックしてしまう。そしてふと、そろそろ鶴居村の雪も少なくなってきただろうか、などと思う。雪の上のタンチョウも、釧路湿原でみた夕日も美しかった。大きな鍋で食事を作ったり、ギュウギュウ詰めのワゴン車で温泉に行ったりしたことも楽しかった。そして何より、人が魅力的だった。鶴居で出会った方々は、タンチョウを保護しているんだ、釧路の自然を保護しているんだと、偉そうな態度をとるわけでなく、ごく自然体に、大事な仕事として、あるいは自分たちの住む周りの環境として自然の保護を考えているということが印象的だった。情熱や愛情を持ち、かつ現状を冷静に見つめながらタンチョウや釧路湿原に向かい合っている人たちに出会って、多くのことを学ぶことができた。一週間ずっと一緒に過ごしたメンバーは、一人一人が自分なりの意見を持ちつつ、思っていることを何でも話し合い、いいなあと思う考え方が出てくれば素直にそれを受け入れる。その真っ直ぐな心意気が私はとても気に入った。自分もそうありたいと思う。ワークキャンプは本当に楽しく、勉強になった。ありがとう。

<はみだし・ハプニング>

原田レンジャーの運転する「つる子号(車の名前)」が雪にはまった。ハンノキ伐採帰りと朝のねぐら調査の2回も。皆で車を押し、スコップで雪をかき、他の車に引っ張ってもらうなどして切り抜けた。鶴居の寒さと雪を実感した、良い(?)体験でした。
パン、多すぎ!!食パンのサイズを間違えて(1斤=普通の売っている食パンのサイズだと勘違い)買い込みすぎ、パンだらけになりました。もうパンは見たくない!
「鶴居の夜は安眠できません。朝起きると額に「肉」と書かれているからです。」(Mくん談)
地元の獣医さんの娘さんが遊びに来てくれました。「むーちゃん」と我々に勝手に名づけられた彼女は、高校を卒業したばかりで、一緒にアクティビティを考えてくれました。鶴居で育ったむーちゃんの意見、参考にさせていただきました。昼食を一緒に食べ、すっかり仲良くなったむーちゃんと記念撮影してお別れしました。大学生になったらFAに参加してね!
いざ出発! 羽田空港に集まった参加者たち! ワークキャンプ中の宿泊施設「ファームイン鶴居」
タンチョウの環境教育プログラムをやっているところ こんな感じでタンチョウが給餌場に集まっている!
タンチョウの営巣地復元作業。
茂ってきた枝を切る!
昨年までに復元した場所に、タンチョウたちの足跡
がある。
伐採地での作業の後で、みんなで記念撮影! 野外セミナーの途中で観察できたエゾシカの群!
野外セミナーの途中で記念撮影!
歩くスキーで、釧路湿原の中を散策した!
真ん中にいるのは、元レンジャーの日高さん。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのレンジャー「音成」
さん。 「音成さん!ちょっと手が危ないです〜」