2003年夏のワークキャンプ
チーフコーディネーター 土屋 史(千葉大2年)
(写真は、本文の下にあります)
<開催地>
(社)日本ナショナルトラスト協会・キナシベツ自然保護地区
(北海道白糠郡音別町直別)
<開催期間> 2003年8月22日(金)〜8月31日(日) 9泊10日
<スケジュール>
8月22日=現地へ移動、開会式、オリエンテーション
セミナー「キナシベツ自然保護史」
23日=チームワークゲーム
作業(海岸・道沿いのバラセン交換)
セミナー「合意形成」
24日=チームワークゲーム
作業(看板の土台作り)
ナイトハイク
25日=作業(看板設置、海岸のステップ補修)
26日=野外セミナー(キナシベツ探検ツアー!)
留真温泉(つるつる温泉)へ
27日=作業(看板の土台作り)、魚の遡上調査
28日=作業(看板設置、ネイチャートレイルの目印ポール立て)
セミナー「自然保護セミナー」
29日=作業(ネイチャートレイルの目印ポール立て、木道補修)
懇親会(地元の方との交流♪)
30日=作業(海岸のゴミ拾い、海岸のステップ補修、)
ワークキャンプ振り返り
31日=大掃除、閉会式
<活動内容・成果>
●看板土台作り・設置
今回のメイン作業として、またFAネットワーク主催のワークキャンプ10周年を記念してキナシベツ2003春のワークキャンプで作成した大きな看板5枚を設置しました。看板の内容は、FAネットワークの「キナシベツ大好き」と気持ちをこめて記した看板、日本ナショナル・トラスト協会の看板、自然海岸への車での立ち入り制限を訴えるもの、草花の摘み取り制限を訴えるもの、F.Aネットワークの10年間の軌跡を記した看板です。看板の高さを低めにし、近くでしっかり見え、景観の妨げにならないように設置しました。
非常に大きな看板だったので、それを支える丸太はとても重く、鋸で丸太を切り、看板を組み立て、深い穴を掘って設置する作業はとても大変でしたが、みんなで力を合わせて完成させることができました。立派に建った看板を見て、みんなで達成感をわかち合いました。
●海岸・道沿いのバラセン交換
湿原や自然海岸の砂浜に人や車が侵入するのを防ぐため、錆びて古くなったバラセン(有刺鉄線)を新しく張り替えました。初めて使う道具もあり、結構危険を伴う作業であったので、緊張した顔で作業していた人もいましたが、慣れてくると、スムーズに張替えの作業を進めることができました。
●海岸のステップ補修
浜への車の進入を防ぐとともに浜へ降りやすくするために作られた、ステップの階段を補修しました。波で打ち離されグラグラになっていたステップも、針金と流木で支えを強化し、そこへ大量の砂を土のう袋に詰めて、波で流されないようにステップの内側に入れると、しっかりと固定されたステップとなりました。砂を運ぶ作業はとても重たかったのですが、チームリレーをしたり、一輪車にひもをつけて数人で運んだりと、チームワークを発揮させてなんとか、仕上げることができました。
●ネイチャートレイルの目印ポール立て、木道補修
キナシベツの自然のすばらしさをわかってもらうために設定されたネイチャートレイルをさらに利用しやすくするために、目印となる手竹のポールを立てた。草木の伸びた湿原の中に入って手竹を運び、立てるのは意外に体力を要するものでしたが、まるで自分達がトレイルを設定しているかのような気分になれました。●海岸のゴミ拾い
キナシベツの浜のゴミ拾いをしました。わずか3時間のうちに拾ったゴミの量は、ゴミ袋10袋以上!空き缶、ペットボトル、発泡スチロール、お菓子のゴミ、海から流されてきた綱、その他様々なものが捨ててありました。短時間でしたがゴミを拾い終えた後の浜と拾う前とでは見違える程のきれいさでした。
○野外セミナー
キナシベツ自然保護地区を自分の足で実際に歩いて丸一日かけてまわってきました!二次林の中には思わぬところに戦争遺産があり驚きながら進んでいくと、キナシベツ湿原と太平洋が一望できる丘の上にたどり着き、見渡す景観に思わず歓声がありました。海岸湿原の中に入ると実の成ったコケモモやガンコウランといった高山植物を見て、海岸湿原が終わると川の河口を水位の低いところを探しながら渡って、砂浜を裸足で歩きました。絶壁と思わせる程の崖を登って、野外セミナーのクライマックス、原生林へと足を踏み入れていきました。太い幹の巨木や清流のせせらぎをこの目で見てきました。メンバー全員、色々な形自然に触れてキナシベツの大自然に感動し、忘れられない1日となりました。
<参加者の声>
★狩野 峻介(かのしゅんすけ・日本大学生物資源科学部国際地域開発学科2年)〜架け橋としての財産〜
「自然保護とは何だろうか」。環境問題に漠然とした興味を持ち農学系の生物資源科学部に入学した私はいつしかそんな疑問を持つようになっていました。それは、世界中が資本主義経済の物差しで測られる今、全ての物が換金の対象とされ自然環境もその例外ではない、という風潮が広がってしまっているからです。そこでは、少しでも多くのお金を稼ぎ、人よりも大きな家に住み、高価な衣類を身に付け、菜食よりも肉食をしたいという人間の欲望が蔓延っています。そんな社会の中ではたして自然保護なる言葉が成り立つのか。私はそんな疑問を持ちつつ実際に最前線で活動されている方の考えに触れたい、と思いキナシベツワークキャンプに参加しました。
現地で出会った仲間たち、そして榊原源士さん(以下ゲンちゃん)とで私は、湿原への侵入を防ぐバラ線張りや、保護を訴える看板の設置などを主に行いました。しかし、前述の疑問はまだ晴れません。バラ線張りや看板を設置しなければその地を踏み荒らす人がいる。自然環境に対してその程度の認識しか持ち合わせない社会の中でいくら「保護」をしてもそれはイタチごっこか自己満足に終始し本来目指すべきものとは別の物になってしまうのではないか、と思っていたからです。そんな中、ゲンちゃんのある言葉を私は今も鮮明に覚えています。それは「自然保護とは、人間が人間をコントロールすることである」という言葉です。つまり、人間も自然の一部である。その人間をより健全なものにしていくためには、まず自然環境を健全なものにしていかなくてはならない。バラ線張りや看板の設置はそのことを人々に伝える啓蒙活動であり、よりよい社会を築くための手段であるということです。私はキナシベツの自然とそこに住む人々を見てそのことを実感しました。みなさんご自分の人生を力強く生きておられます。伝わってくるオーラが都会のそれとは比べ物になりません。良い意味で人間くさくまさに生きているという感覚を直に感じとることができました。
私は、このキナシベツで多くの事を学びました。「自然保護とは何だろうか」という疑問に対する大きなヒント。仲間とのコミュニケーションを通しては、自分を表現することの重要性、責任感、チームワーク、思いやりを学びました。それらは、私にとって貴重な財産になると同様これからの成長への大きな架け橋となってくれると強く感じています。ゲンちゃんをはじめキナシベツワークキャンプに伴に参加したみなさんには非常に感謝しています。かけがえのない時間をどうもありがとうございました。
★桂 千絵(かつらちえ・江戸川大学社会学部環境情報学科3年)〜キナシベツワークキャンプ〜
このワークキャンプに参加したのは、夏休みバイトだけの生活終わりたくないと思ったからです。大学で環境について学んでいるので自然保護には興味がありました。ワークキャンプ自体始めての経験だったので迷いもあったけれど参加して本当に良かったと思っています。
このワークキャンプで一番印象的だったことは、榊原さんの“自然保護とは人が人をコントロールする事”という言葉です。自然を壊すのも人間、保護するのも人間で人間の行動のみで自然をどうすることもできると実感しました。地元の方のお話を聞いたり、同じ大学生の考えを聞くことができ、自分の視野を広げることができたと思います。ワークキャンプ中では丘の上から夕陽を見たり、外灯のない道を自然の音だけを聞いて歩いたりしました。テレビもない普段の生活から離れたことよって、心に余裕をもって自分自身のことを見つめなおすことができました。
学校で自然は大切と習ったり、自分で考えていても実際にこのワークキャンプで自然を感じたことによって、あらためて自然のすごさを感じました。また、北海道に行きたいと思いました。
<はみだし>
・トラストの家では寝室のベッドがガラガラ。ベッドに寝ないで、リビングで毛布をかけて寝てしまう人が続出でした!そんなにみんなと一緒にいたかったのかなー。
・野外セミナーの後、榊原さんに温泉に連れて行ってもらいました。女子風呂ではお肌がツルツルになって疲れた体をほぐし平和な時を過ごし、一方男子風呂の脱衣所では騒がしくY君が写真を撮りまくっていたとか・・・。
・食事係のKちゃんは、まさにみんなの優しい母ちゃんでした。でもある朝、食事当番が寝坊して大遅刻すると、お怒り爆発!「Kちゃんキレる!」という伝説は今もみんなの胸に深く残っています(笑)
海岸に広がる草原への立ち入りを制限する看板を製作! | 重機を使わないと立てられないほど立派な看板ができました。 |
自然保護区の中を流れる川で、魚類調査。 | 昔に比べると魚は減ったそうです! |
海岸の砂浜に降りる、階段の補修作業が終了!みんな満足げ。 この階段も、ボランティアの先輩が数年前に作ったものだそうです。 |
野外セミナー。いつもの場所で、記念写真! この場所に立つと写真を撮りたくなるのです。 |