2002年春のワークキャンプの報告

ウトナイ湖サンクチュアリ

チーフコーディネータ 小林 到(こばやしいたる・千葉大学3年)


★開催地:財団法人日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ(北海道苫小牧市)
★開催日:2002年2月17日(日)〜2月27日(水)
★活動内容・成果:
主な活動は日常業務に忙しいレンジャーのサポートでした。
その内容は二つあり、一つはウトナイ湖に渡来するハクチョウの全数カウント調査。そしてもうひとつはネイチャーセンターに保管されていた鳥の死体から仮剥製を作ることでした。

●ハクチョウ全数カウント調査
 ウトナイ湖に毎年渡来するオオハクチョウの数は100〜200羽前後。そのうちの約半数の50〜100羽前後がウトナイ湖内で餌付けされている場所によって来ると言われています。今回はそのオオハクチョウを含め、ハクチョウたちがどれだけ餌付けに頼っているのかを調べるための基礎データを作るために餌付け地のハクチョウカウントを行いました。
昨年度まではネイチャーセンター内でも餌付けを行っていましたが、今年度以降は餌付けを見直す傾向にあり、その影響を調べるというのが調査を始めるきっかけになっていました。

●仮剥製作り
 ウトナイ湖のネイチャーセンターは広く一般の方に知られていることもあり、また博物館相当施設であることにもちなんでいろいろな鳥が運ばれてきます。
ケガをして保護していたが亡くなってしまった鳥や交通事故や建物の窓にぶつかって死んでしまった鳥など、、、。そして運んできてくれた人のなかにはこの死を無駄にしないためにも標本にするなど教材にしてほしいとおっしゃる方もいるそうです。
今回はネイチャーセンター内の整理をすることに伴い、鳥を死体から仮剥製(標本)にする作業をしました。

<野外セミナー>
 今回の野外セミナーは、自分たちがワークキャンプで働くウトナイ湖周辺の豊かな「自然」とそれを取り巻く「環境問題」を自ら体感できるセミナーでした。
 「自然」に関してはウトナイ湖に注ぐ美々川の源流を間近で観察し、また、たくさんの野鳥が訪れる弁天沼の大切さを教わりました。
 「環境問題」に関しては先にあげた「自然」を脅かす苫東開発問題の現場や現在問題になっているハクチョウ給餌の実態、更に苫小牧周辺地域の環境を監視する環境監視センターの役割などを学びました。
 野外セミナーを行っていただいたのは地元のレンジャーでしたが、その地元の自然のすばらしさや環境問題の深刻さを知っている方から教わるのは自分たちで勉強するよりもはるかに現実味があり、興味を持って話を聞くことができました。

<初参加者の声>

四柳亮一(よつやなぎりょういち・早稲田大学2年)    
 「「はじめの一歩」」。
 言うのは簡単であるが、いざ実行しようとすると難しいのはみんなもよく知っているはず。特に「環境」という言葉を目にすると堅苦しいイメージがあり、自然保護には興味があるのになかなか足を踏み出せない人もいるだろう。僕もそうであったが、大学の英語サークルの先輩の勧めで今回の北海道苫小牧市にあるウトナイ湖ワークキャンプに参加することになった。 ここでの大きな仕事は2つ。一つ目はオオハクチョウの定点調査・給餌。二つ目は鳥の仮剥製作り。僕が印象に残ったのは後者のほうで、これは一度不慮の事故、病気で死んでしまった鳥を仮剥製にし、研究所や博物館、大学などに飾る。つまり、私たち人間の手で、死んでしまった鳥に第二の人生を歩ませてあげるのである。作業開始当初は悪臭が出たり、内臓を取り出したりして気持ち悪がってた人もいたが、作業後半にはみんなが鳥を我が子のように思っていた。自分もトラツグミとアオジという鳥を取り扱い、出来ばえこそ良くはなかったが、一生に一度の体験ができて命の大切さが少しでもわかった気がした。
 一方忘れてはならないのは広大な北海道の美しさである。周りに広がる景色はそこの住民や動植物だけではなく、僕たちワークキャンプ参加者を魅了する。僕たちの宿泊したネイチャーセンターからでは、窓越しから数10cmという至近距離にあるえさ台に野生のリスや北海道にしか生存しない鳥がどんどんくる。しかも、もっとも感動したのはガンの飛び立つ瞬間である。朝起きるのが苦手な僕も最終日には何とか起き、一面の銀世界を背景に何千、何万というガンの大群が一斉に飛び立つ瞬間を見て言葉など要らない感動の渦に巻き込まれた。
 まだまだ感想は尽きないのだが、ワークキャンプに参加して言えることは「参加してよかった」である。というのも、「環境」という言葉に対して以前より身近になった面もあるし、なにより10日間という短い間ではあったが、集団生活というお互いの心と心をぶつけ合うことによりかけがえのない「仲間」が作れたからである。
 大学生活でしかできないこと。それは山ほどあるが、このワークキャンプは大学生だけで構成されている。しかも、自分たちで作り上げるそれは厳しい作業とはなるが、終わった後の達成感は体験者にしか分からない素晴らしいものである。
 僕たちワークキャンプ参加者を歓迎してくれ、指導してくれたウトナイ湖ネイチャーセンターのレンジャーさんにこの場をもって心から感謝した
い。
 是非、皆さんも「「はじめの一歩」」を踏み出してほしい!! 


上田陶子(うえだとうこ・東邦大学2年)     

 今回、W.Cに参加して本当に良かったと心から思えます。こんなに濃い体験ができるなんて予想していなかったのです。ウトナイでは鳥の仮剥製作りと白鳥の定点調査を行いました。
 仮剥製作りは,普段絶対にできない非常に貴重な体験でした。また、毎晩のセミナー、これもまた刺激的でした。このウトナイでの体験を通して得たこと、感じたことを少しでもこれからの生活の中で役立てていけるようにしたいです。ウトナイ湖、人、企画の素晴らしさ、どれをとっても絶品です。
 毎日笑顔が絶えなくて10日があっというまに過ぎてしまいました。あんなに充実していて、とても楽しい時間を送れるなんて今までなかった事です。W.C参加して、自分の中で良い方向に何かが少し変わりました。そして、これからも付き合っていけるような仲間に出会うことができました。言葉では言い尽くせないほどの体験をさせてもらって、本当に感謝の気持ちでいっぱいです!


<参加者の様子>
 今回の参加者は全部で9人。うち男3人、女6人で、ワークキャンプ初参加者は7人でした。同じ大学から来てる人もいましたが、メンバーのほとんどがこのワークキャンプで初顔合わせ。それでも力をあわせてひとつのことをやり遂げるのがワークキャンプの醍醐味でもあります。
 はじめはメンバーの男女の比率に驚いてなかなかお互いに話しかけられない人もいましたが、ワークキャンプが始まった2,3日後にはもう打ち解けあっていました。食事当番や掃除当番などは毎日代わる分担制でしたが、自分の仕事が終わったらすぐ他の仕事が終わってなさそうな人を手伝うなど、お互いが協力し合う面が多く見られました。
 ワークキャンプ後も参加者同士は仲が良く、今でもよく連絡を取り合っている仲間もいるようです。また、ワークキャンプを終えた9人の中では8日間の経験を生かし、自ら行動を起こそうとしている人もいます。更にボランティア活動に参加したくてFAの活動にそのままのめり込んでいる人もいます。いずれにせよ、ワークキャンプは良い経験になったと思う参加者が多かったようです。


<おおまかなスケジュール>

2月18日(月)
9:00京急線羽田空港駅改札集合→12:00〜14:30千歳空港到着→
17:00〜18:00ネイチャーセンター到着
センター到着後、すぐに食料買出し
夕食後:ボランティアセミナー(担当:本川)

2月19日(火)
館内でのオリエンテーション(担当:嵯峨レンジャー)
ハクチョウ定点調査(12:45〜13:00)
ハクチョウ給餌(13:00〜14:00)
仮剥製作りレクチャー(担当:葉山レンジャー)
ウトナイ湖の歴史セミナー(担当:小林)

2月20日(水)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
仮剥製作り
野外セミナー事前勉強会(担当:小林、本川)

2月21日(木)
野外セミナー(担当:葉山レンジャー、嵯峨レンジャー)
野外セミナー振り返り(担当:小林)

2月22日(金)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
仮剥製作り
合意形成セミナー(担当:本川)
ビデオ鑑賞

2月23日(土)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
仮剥製作り
自然保護セミナー(本川)

2月24日(日)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
仮剥製作り
ナイトハイク(担当:小林)

2月25日(月)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
仮剥製作り
ハクチョウセミナー(担当:小林)

2月26日(火)
仮剥製作り
ハクチョウ定点調査
ワークキャンプ振り返り
懇親会

2月27日(水)
館内大清掃
解散


<はみだし>
・この年で仮剥製を作れる学生はそういません。しかし、参加者はもう作り方を覚えてしまいました。いまなら(鳥なら)なんでも作れそう、、、?
・夜は毎晩晩酌です。8日間で一升瓶5本空けたら食当さんに怒られてしまいました。でもまだまだっしょ?
・ネイチャーセンターの目の前でハイイロチュウヒのオスという珍しい猛禽類に出会いました。見つけた瞬間、ワークキャンプのメンバー全員から始まり、お客さんからなんとレンジャーまで、興奮して見入っていました。「いや〜キレイだねぇ〜」
・食事当番は毎食二人ずつ。毎回担当が代わりますが、夜はなぜか全員食当のことが多く、ひどい時は狭いキッチンに参加者全員(9人)が集まることも。人口密度高すぎです。

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