2002年春のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 山崎麻里(やまざきまり・東京大学3年)

★開催地:財団法人日本野鳥の会鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(北海道阿寒郡鶴居村)
★開催期間:2002年3月7日(木)〜13日(水)
★ 活動内容・成果
今回のワークキャンプでは、「タンチョウ保護の手助けをする」を目的に活動してきました。メインの作業は、ハンノキ伐採です。タンチョウの好むヨシ原にハンノキが繁茂すると、タンチョウが営巣しなくなります。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは、1999年からタンチョウの生息環境であるヨシ原の復元のためのハンノキ伐採実験を行っていて、ワークキャンプで毎年お手伝いをさせていただいています。今年は、釧路教育大の学生や地元の方など、多くの方々と一緒に作業しました。胴長を履いたり、スノーシューで歩いたり、潅木を鋸で切ったりと、初めてのことばかりでしたが、大人数で協力したおかげで、予想を大きく上回る範囲の伐採ができました。2日目には近くにタンチョウがつがいで飛来し、皆を喜ばせる場面もありました。
また、もうひとつの大きな作業として、サンクチュアリのHP作成を行いました。HPを媒体としてサンクチュアリの支援者を増やしたい!との思いのもと、参加者全員で作成しました。ワークキャンプ中には、まず皆でどんなHPを作りたいかを徹底的に話し合いました。そして目指すものがイメージできたところで、分担して取材しました。展示品の写真を撮る人、来館者やカメラマンにインタビューする人、分かりやすい案内図を考える人など、昼間はそれぞれが自分たちで考えて活動し、夜は進行状況を持ち寄ってミーティングです。人に伝えるには自分たちも知らなきゃ、ということで、HP作りを通して随分勉強することができました。何より、参加者全員が主体的に活動できたのが良かったと思います。HPが出来ましたので、是非御覧下さい!私たちの作ったHPが少しでもサンクチュアリの、ひいてはタンチョウのためになれば、と思います。
 --私たちの作った鶴居サンクチュアリのホームページへ--
この他にも、レンジャーさんや自分たちによるセミナーや、観察プログラム、早起きしてのねぐら調査、丸一日掛けて釧路湿原を回る野外セミナーなど、盛りだくさんの7日間でした!

<参加者の声>

松家智子(まつかさとこ・津田塾大学2年)

ワークキャンプでの体験は私の想像を超えるとてもすばらしいものでした。初めて経験する−18℃の世界での丹頂のねぐら調査。鼻の中までパリパリとする奇妙な感触の中で見た樹氷や川霧の美しさはとても印象的でした。
また、丹頂はもちろんのことサンクチュアリの窓からはたくさんの野鳥、中では釧路地域でしかみられない鳥も見ることができました。そして、一番心に残っているのは、壮大な湿原を横断するエゾシカの集団。まるでサバンナのような、日本でこのような光景を見られるとは信じられないくらいでした。
このワークキャンプで私はたくさんの人と出会い、多くのことを得ることができました。7日間、一緒に過ごした仲間。さまざまな大学の人たちで構成されていましたが、まるで昔からの友達のようにとても楽しい時間を共に過ごすことができました。夜のセミナーではそれぞれの自然保護活動への思いなど自分とは違った見方も知ることができ、内容の濃い、とても充実したものでした。
また、いつも私たちのお世話をしてくださった野鳥の会のレンジャーさん、ハンノキ伐採を一緒にした釧路教育大の皆さんや、交流会で自然や保護活動について教えてくださった地元の環境会議メンバーの方々と過ごすことができた時間は、わたしにとって、宝物のようなひと時でした。
初めて触れる世界で、自然、人からたくさんのことを学ぶことができました。この経験を生かし、私のこれからの人生に役立てていければと思います。そしてまた、機会があればワークキャンプに参加したいと思っています。


長塚行雄(ながつかゆきお・慶應義塾大学3年)

刺激に満ち溢れた経験―僕にとってワークキャンプはそういうものだった。遠く離れた
地でのボランティア、1週間の共同生活、地元の人との交流、全てにおいて自分のアイ
デンティティだと思っていたものを揺さぶるものがあった。
自然保護活動を実際にやってみたい、暇な学生時代なのだから地元ではなくどうせなら
遠くの北海道でやってみよう、そう思ってワークキャンプに参加した僕は、高校生時代か
ら「人間の活動で傷ついた自然を守るのは、自然に対する償いである。だから自然保護活
動をしなければいけないんだ」という使命感や倫理的な動機につき動かされていた。それ
が僕のアイデンティティだったといえる。
ところが、このワークキャンプでお世話になったサンクチュアリのレンジャーさんや地
元の方々、それに僕以外のワークキャンプ参加者は皆、「〜しなければならない」でなく
「〜したい」で自然保護活動に携わっている、あるいは携わりたいと思っている人たちだ
った。そして、僕なんかより皆ずっといきいきしているように感じた。そういう姿を1週
間のワークキャンプ中ずっと見ていて、「ああそうなんだ、自然保護を押し進める原動力
って好きなことをやりたいと思う心なんだな。」と強く実感した。例えばタンチョウの保
護についていうなら「タンチョウにも生存権があるのだから倫理的に守らなければならな
い」ではなく「タンチョウってかわいいな、好きだな、子ども達、孫達にも見せてあげた
いな」という気持ちから保護活動をやった方が楽しいし、より大きな力になると思う。
このようにワークキャンプは今までの僕の信念を揺るがす経験となった。自分を否定し
なければいけないから確かにつらいけれど、将来きっとプラスになると信じているし、こ
ういう経験は東京にいてもできないのではないかと思う。


<参加者の様子>
参加者は皆それぞれの持ち味があって、それが発揮されたキャンプだったと思います。専攻分野も参加動機も自然保護への取り組み方もばらばら。それが共同生活をして同じ目標に向かって活動していく中で、良い具合に生きてきました。他の参加者から得るものが多く、互いに教えあい、学びあい、助けあえたと思います。全員真剣な態度で活動に参加し、話し合いでは活発に意見が飛び交いました。ただ楽しいだけでは終わらない、やりがいがあって得るものの多いキャンプでした。

温根内タンチョウ保護区でのハンノキ伐採
作業風景。伐採した木を運ぶ。
伐採後の風景。ハンノキがなくなり、タンチョウ
が利用できるようになる。
作業後の記念写真。地元の方も参加して
いただき、総勢26名!
夜のセミナーの風景。
音成レンジャーが子ども向けに作った
『タンチョウ観察プログラム』を体験。
タンチョウのしぐさを観察しながら
ビンゴゲームをしました。
野外セミナーの途中で記念撮影。
タンチョウのねぐらとなる雪裡川が見渡せる
高台で。レンジャーの原田さんと、前レンジャ
ーの日高さんに案内していただいた。


<スケジュール>
3月7日 釧路空港へ出発、和商市場
     オリエンテーション(サンクチュアリの活動&展示・生活案内)
     セミナー(アイスブレイク)
     セミナー(ハンノキ伐採について)
 8日 朝のねぐら調査
    セミナー(タンチョウについて)
    HP作り(コンセプトワーク・役割分担)
    カウント・標識調査
 9日 ハンノキ伐採@
    学生交流会(野生生物保護について)
 10日 ハンノキ伐採A
    セミナー(自然保護)
 11日 HP作り(取材)
    カウント・標識調査
    タンチョウ観察プログラム
    交流会(地元の方々と)
 12日 野外セミナー
 13日 野外セミナー振り返り
    全体振り返り
    解散

<ハプニング&はみだし>
・バニーちゃんゲーム
 参加者の中で怪しいゲームが大流行。アイスブレイクに一役かっていました(^^;)

・地元の方々が一人一品、地元の食べ物を持ってきて下さいました。行者にんにく、手作りチーズ&ソーセージ、牛乳豆腐など、初めて見るものばかり。中でも獣医の黒沢さんに戴いた手作りヨーグルトが大人気で、参加者全員自宅に持ち帰ってヨーグルト作りに励んでいます。
・鶴居のワークキャンプは毎晩温泉に入れる!合計4箇所もの温泉巡り。特に牛乳缶の浴槽や露天風呂付きで、お肌すべすべ効果抜群の鶴乃湯は参加者に大人気でした。
・ワークキャンプ終了後、別れるにも名残惜しく、参加者全員で、温根内ビジターセンターでクロスカントリースキーを体験してきました。ほとんどの人が初クロカン。転びまくっている人もいましたが、雪世界を満喫してきました。