2002年春のワークキャンプの報告

キナシベツ自然保護区

チーフコーディネーター 澁谷彩子(しぶやあやこ・明治学院大学2年)

★開催地 :(社)日本ナショナルトラスト協会・キナシベツ自然保護地区(北海道白糠郡音別町直別)
★開催期間 :2002年2月18日〜2月26日
★活動内容・成果

●キナシベツ自然保護地区自然史調査
 今回のメイン作業でした。
 現時点でのキナシベツ自然保護地区の景観、自然史を把握しておくことで、管理計画が作成しやすくなる、監視活動がしやすくなる、特定地域の指定を受ける時の基礎資料になる、また、経年変化をみることができる、などの目的をもった作業でした。
キナシベツ自然保護地区の西端と東端において、3人1組となり、徒歩で調査しました。
 初めての調査ということで、調査方法や調査項目に頭を悩ませ、まとめ方も手探りで作業を進めていきましたが、榊原さんが、10年のプロジェクトにしたいとおっしゃっていたのですが、本当にそれくらい大きなプロジェクトの第一歩になればいいな、とメンバ−全員が感じていたようです。

●アオサギのコロニ−調査
 1999年春から継続して行っている、キナシベツ自然保護地区の自然度を推測するための調査です。慣れないかんじきをみんなで履いて、雪山に分け入って、ときに埋まりながら調査しました。今年は昨年より8個増えた、87個のアオサギの巣を調査することが出来ました。ばんざい!また、新たな1本のカラマツの木にもアオサギは巣を作ったようす。

●本棚制作・パンフレットボ−ドの製作・改造・道具だなつくり

 これらの作業は、トラストの家での,来訪者の利便性の追及と、トラストの家の維持を目的として行われました。慣れないビス打ちと寒さに次第に鍛えられ、みんな強くたくましく職人として成長しました。なかには力が有り余って、当初予定していなかったベンチを作成し始めたメンバ−も。使いやすく見やすい素敵なパンフレットボ−ドと本棚が出来上がりました。

<参加者の声>

原香織(はらかおり・江戸川大学3年)

私は今回初めてワークキャンプに参加しました。少し前にFANに関わりだしたのですが,その前からワークキャンプの話は聞いていて,ずっと行きたいと思っていました。一番初めに大きなインパクトを受けたのがセミナーです。前々から自分の中のどこかで考えていた事を話し合ったので,充実感を味わいました。そして今回の自信作は,皆で何度も何度も頭をひねり悩みながら作り上げたキナシベツの地形図です。地図作り作業を通して皆納得するまでどんな小さな質問もし,確認し合いました。一度で理解できず同じ事を何度も聞いたりしましたが,ちょっとでも引っかかったらどんな事でも質問して良いのだということを学びました。作業を進める間,皆で疑問を全てなくし,共有していきました。そうした事によってなのか,だんだんみんなの気持ちが一つになっていました。あの集中力と,何も言わずとも皆の気持ちが伝わってくる空気は凄かったです。あと一つ,ワークキャンプでの私の一番の収穫。私は皆から大きな自信をもらいました。例えて言うと,皆から脱皮するための道具をもらった感じです。そして,その道具を使って私は子どもの頃からずっと自分に纏わりついていた堅い殻をぶち破ることができて,これまでくだらないと思って発言するのを途中で止めていた自分の考えている事を,自信を持って言えるようになりました。今なら自分のことで何と言われても痛くも痒くもないくらいです。キナシベツのために役立ち,自分が成長し,得たものがドカーンと大きいワークキャンプでした。

佐藤孝司(さとうこうじ・弘前大学4年)

私は今回のワークキャンプが初参加でしたが、とても有意義なものでした。参加した当初の目的は、「就職活動を前にしての自己分析の一環」で、自分のやりたい仕事が本当に環境保全に携ることか?
環境保全という仕事が自分にできるのかを確かめるために参加しました。実際は早起きして、作業して、夜のセミナーをして、疲れて就寝といった生活をおくり、自己分析をするどころではありませんでした。
しかし、この9日間、作業やセミナーを通して環境保全って何?と常に考えていたことを覚えており、普段の時間に追われる生活に戻った今思うと、一つのことに関してあんなに真剣に考えたことは今まで無かったと思います。また、当初の目的だった「自己分析」も結果としてできていたと思います。
最後に、北海道はやっぱり「雄大」です!湿原の不思議な地形「ヤチボウズ」、野生の動物「鹿や鳥etc」、長〜い海岸線、原生林、どれもが新鮮な体験でした。また、キナシベツに集まり巡り会った仲間達との生活は人生最高ランクの思ひ出です。
本当に最後に・・・熊警報に御注意を・・・


<参加者の様子>
9日間生活をともにして、作業を協力しながら進め、セミナ−やミ−ティングでそれぞれの思いや考え方をぶつけ合い、食料を奪い合った仲間です。家族のようなものです。
どのメンバ−も、お互いから、キナシベツの自然から、また書ききれないような些細な出来事や大きな貴重な体験の集合体であるワ−クキャンプから、なにかを感じて考えて、帰っていったようです。
釧路についたら、まずは和商市場で腹ごしらえ! アオサギのコロニー調査風景。
上に見えているのがアオサギの巣。
野外セミナー。キナシベツの丘の上で。 同じく野外セミナー。原生林内の大木の前で。
夜のセミナーの風景。 地元の方から、カニの差し入れをもらい、
ほくほく顔(特に私!)

<スケジュール>
 2月18日 現地へ移動、開会式
       セミナ−「キナシベツ自然保護の歴史」
 2月19日 作業(本棚、パンフレットボ−ドの製作、改造)
       セミナ−「合意形成」
 2月20日 作業(アオサギコロニ−調査)
 2月21日 作業(キナシベツ自然保護地区自然史調査・西端編)
       セミナ−「自然保護シュミレ−ション」
 2月22日 作業(キナシベツ自然保護地区自然史調査・東端編)
       セミナ−「チ−ムワ−ク」
 2月23日 野外セミナ−
 2月24日 作業(キナシベツ自然保護地区自然史調査のとりまとめ)
 2月25日 作業(とりまとめのつづき、本棚、パンフレットボ−ドの製作、改造、
道具だな作り)
 2月26日 大掃除・閉会式・解散


<ハプニング・はみだし>

・ 湿原は4つ足で歩く?
K君は湿原の中を調査中、「絶対4つ足のほうが速い!」と主張。同じチ−ムの3人み
んなが湿原の中はずっと4つ足で歩いていました。
・ 寝ながら笑う?
キャンプ中ずっと笑顔だったSちゃんは、睡眠中もずっと笑っていました。素敵な特
技だと思いました。
・ にらめっこはキライ?
人並みすぐれた洞察力と想像力をもっていて、キャンプ中みんなに適切なアドバイス
をくれたNちゃん。そんな彼女の弱点は・・・にらめっこでした。
・ 梅昆布茶
外の作業は寒い!そんな時は梅昆布茶が大活躍!