2002年夏のワークキャンプ
霧多布湿原
チーフコーディネーター 吉田菜々子(千葉大学3年)
<開催地>
霧多布湿原センター・霧多布湿原(北海道厚岸郡浜中町)
<開催期間・スケジュール>
2002年9月13日(金)〜9月20日(金)
13日…現地へ移動、懇親会(お世話になる方々とのジンギスカンパーティー)
地元写真家の方によるスライド上映会14日…町内オリエンテーション、作業(木道補修)、セミナー「チームワーク」
15日…作業(マウンテンバイクコースの標識整備)、セミナー「合意形成」16日…作業(マウンテンバイクコースの標識整備)、
セミナー「霧多布自然保護の歴史」「自然保護とは」17日…セミナー「霧多布湿原トラスト理事長に聞く 私が自然保護を始めた理由」、
野外セミナー(湿原の色んな顔を見て感じて)、
町役場鳥獣保護課の方達との懇談会18日…作業(ベニエの垣根補修)、ワークキャンプの振り返り・まとめ
19日…地元漁師さんによる「魚のおろし方講座」、セミナー「バードソン」、
バードソン報告会、交流会(地元の方々と交流)20日…宿舎清掃、解散
<活動内容、成果>今回は3つの作業を通して霧多布湿原の自然保護のお手伝いをすると同時に、地元の方々によるセミナーや霧多布湿原に関わる人々との交流を通して霧多湿原や自然保護についての理解を深めました。
〇作業
「木道補修」
ぬかるみが多く歩きにくい湿原の観察路に木道を設置する事によって、お客さんが安全に自然観察を行えるほか、湿原への踏み込みを最小限に抑えることができます。半日の作業で5つの木道を作り、設置し終えました。設置している間にも観察路でフィールドサイン(タンチョウの羽やエゾシカの骨など)を次々と見つけ、よりたくさんの人にこの湿原の素晴らしさを知ってほしいなあと思うきっかけになりました。
「マウンテンバイクコースの標識整備」
湿原センターを起点に林道を走るコース(全長約10km)に標識を設置し、ガイドなしでも安心して利用できるコース作りを目指しました。2日間の作業で距離ポストと分岐の表示計25本を設置し終えました。
標識を作る作業はわざわざ湿原センターの玄関前に机を出して行い、作業風景もセンターの展示の一部にしてしまいました。来館者の方たちも興味を持って話しかけてくれたんですよ。
「ベニエの垣根補修」
昨年のワークキャンプで作った「なかよし小径(こみち)」の垣根は、“ベニエの垣根”といって木の杭の間に小枝を積みあげたちょっとステキな垣根です。1年経ってヘビなどの小動物もこの垣根を気に入ってくれているよう。冬場の積雪などによって小枝の量が減っていたので、間伐材を拾い集めてきて補修を行いました。雨の中の作業、みんなよくがんばりました!
〇セミナー(勉強会)
「野外セミナー」
半日かけて山際の湿原や河口の湿原、湿原の始まりから湿原の極相まで様々な湿原の様子(さすが国内で3番目に広い霧多布湿原!)を実際に見てまわり、湿原の繊細さ・貴重さを実感することができました。最後にはメンバーそれぞれが湿原を一言で表現してしめくくり、自分なりの湿原に対する認識を持つことができたようです。この他にも、浜中で生まれ育って当たり前のように湿原を見てきた女性が霧多布湿原トラストの理事長になったいきさつや日ごろの業務を三膳理事長ご本人から伺ったり、役場の鳥獣保護課の方から自然保護に対する一味違った見方を聞かせていただいたりして、霧多布湿原をとりまく人々の様々な思いを知ることができました。
〇バードソン報告会
期間中に学生バードソンの報告会が行われました。詳しくは「バードソン報告会」をご覧下さい。
<参加者の様子>
参加者9名のうち初参加者は6名と多めだったのですが、みんな明るく協力的で、作業面でも生活面でも終始和やかムードでした。セミナーでは積極的に学ぶ姿勢が見られ、活発に意見が交わされました。夜は遅くまで話し込み、そのまま浜中町名物の昆布漁(a.m4:30頃開始!)を見に出かけるなど、若者らしくちょっと無茶をしてでも浜中町を楽しもうとしていました。霧多布の自然はもちろん、お世話になった地元の方々の温かさにもメンバー一同感激し、すっかり霧多布のファンになったようです。
〇はみだし
宿泊施設としてお借りした番屋(漁師さんの宿泊所兼作業場)のオーナー今さんは、現役の漁師さん。交流会用の魚料理を作る際、鮭やサンマのおろし方からおいしい食べ方まで丁寧に教えてくださいました。普段あまり料理はしないというメンバーも、プロの包丁裁きに感心し、見よう見真似で巨大な秋鮭と格闘していました。家に帰って披露すれば、家族もびっくり!?その他にも霧多布ワークキャンプには、作業やセミナーだけではない楽しみがもりだくさんです。そんなお楽しみを含めて多くの事を体験したいという学生の皆さん、霧多布ワークキャンプがお勧めですよ!
<参加者の声>
●安楽一紗(あんらくかずさ・東邦大学3年)
三年生になって「もう大学生活を半分終えてしまったのに、何一つ積極的なことをしてこなかったなぁ」と漠然とした思いはあったものの、行動には移せないでいました。そんな時に友人からこのワークキャンプの話を聞き、やるなら今しかないと思い参加を決めました。
実際参加してみると、思っていた以上に内容の濃いものでした。木道補修などの作業が中心だと思っていましたが、夜のセミナーが大きかったです。自然保護について普段ではできないくらい深く考えることができたし、他の人の意見を聞くことで、また違った視点からものを見ることができました。昼間に広い湿原を見たり湿原内に入って作業したことで、より自然を身近に感じ、そこから自然保護の必要性を体感できました。また、そのことが地域に保護を広めていくためにとても重要なことというのは、今回私にとって新たな発見になりました。自然を楽しむという事は、無意識のうちに自然保護スピリットの基礎を作っていたんだ!ワークキャンプに参加して霧多布に行き、自然に触れ、たくさんの人達に出会い、今までで一番充実した夏休みになりました。時間があれば、是非春でも来年でも参加したいです。
●赤瀬悠甫(あかせゆうほ・横浜国立大学1年)
現地コーディネーター、長岡さんの「来ていいよ」という声を聞いて、僕らは彼のほうへと足を踏み出した。足元がふわふわしている。その場で軽くジャンプすると、一帯の“地面”が弾んだ。「わっ! この地面、浮いてるっ!?」つい調子に乗って何度も跳んでしまう。
ここは霧多布湿原の一角にある沼の“上”だ。岸辺から水面にかけてミツガシワなどがマット状に張り出し、その上にヨシが茂って浮島となっている。強くジャンプしたら、破れて落ちるかもしれない。実際、ところどころにある開水面は、“ヤチマナコ(谷地眼)”と呼ばれ、以前は馬が落ちて上がれなくなったこともあるそうだ。本来なら立ち入るべきではない場所である。湿原は繊細で、一度踏み跡をつけたら回復するのに数年かかる、といわれる程だ。僕らの与えてしまったダメージも相当なものだろう。
何のために自然の中に踏み込むのか? ただ楽しむため、といっては無神経すぎる。僕らがこの自然を体感して、グッと腹の中にためたもの。それをどう自分の中で“編集”し、伝える――人に、あるいは自分自身に反映させる――かが問題になるのではないだろうか。その伝えられるものとは、湿原“単体”についてではなく、僕らとこの湿原との“つながり”と言ってもいいかもしれない。経験としても、意識の上においても、僕らをより霧多布の自然に近づけたこの体験。遊び心も添えて伝えるために、ただ今“編集”作業中である。
マウンテンバイクコースの標識整備 | マウンテンバイクコースの標識整備 |
マウンテンバイクコースの標識整備 | 野外セミナー。木道で記念撮影! |
野外セミナー。ヤチ坊主を囲んで・・・。 | ベニエの垣根補修。小枝を集めて・・・。 |
垣根にします! |