NPO法人トラストサルン釧路は地元の市民が中心になり1988年(平成元年)に任意団体として発足し2000年(平成12年)7月には特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受け現在に至ります。
<主な活動>
●自然保護地の取得
トラストサルン釧路は多くの人からいただいた寄付を使って、釧路湿原周辺の保護が必要な土地を買い上げていくナショナルトラストの方法で活動を続けています。これまでに、国立公園の外にあって保護されていない湿原や水源地の丘を買い上げ、地主との保護協定などによって、20箇所、約202haをトラストサルンの保護地にしてきました。
●保護地の植林
市民が参加する植林行事などを開催し釧路湿原の水源林の再生活動を行っています。
●調査と提言
達古武沼の生態調査を実施しラムサール条約登録地に達古武沼を入れることに大きな力を発揮しました。湿原に流れ込む土砂の流入の調査は湿原の乾燥化に警笛を鳴らすきっかけとなっています。トラストサルン釧路は市民の立場で調査を行い、関係機関に必要な提言を行っています。
2002年より環境省と協働で釧路湿原の自然再生事業を展開しており、民間の視点から取り組む湿原再生により、その成果が期待されています
NPO法人トラストサルン釧路理事長
黒澤信道さんからのメッセージ |
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NEC 学生バードソン2007 が終了し、一連のプログラムを通じてたくさんの方々から募金が集められたと聞き、本当に感謝しています。
バードソンの精神は、「野鳥を見ることを通じて自然のすばらしさを再認識するとともに、多くの人の賛同と協力を得て、野鳥をはじめ野生生物の生息する環境を守る」ということであると、私なりに考えています。これまで18
年間、皆さまからのご寄付によって自然保護地を取得しながら釧路湿原の環境保全に努めてきた私たちトラストサルン釧路の活動は、確かにこの主旨に適うものであると自負し、3
年前にバードソンの募金先としてのお話をありがたくお受けしました。
釧路湿原は国立公園に指定されてはいますが、それは中心部だけのことです。周辺の河川域にある中小の湿地や、釧路市の市街地に近い湿原の南部分は公園外となっています。私たちはこうした保護指定を受けていない湿原の保全を目指しており、昨年末に取得した第20
号保護地15.5ha もそのひとつです。一昨年と昨年の学生バードソンのご寄付を含めた浄財で取得したこの保護地は、市街地に近いにもかかわらず、タンチョウやオジロワシ、また国内では釧路湿原にのみ生息するキタサンショウウオが確認され、ここのシンボルにもなっています。しかしながら開発可能区域であること、至近に新しい道路建設が計画されていることなどから、この地域の保全の旗印とすべく取得しました。
これら3 種類の生物は、いずれも国や市の天然記念物に指定されていることもあり、形式上は配慮されています。しかし現実に道路建設の予定地域にこれらが生息していると、タンチョウについては離れた場所に採餌場を造って予定地に出てこないようにする、オジロワシは周辺を撹乱することで立ち退かせる、キタサンショウウオにあっては捕獲して他の場所へ移すといったことがまかり通っています。私たちはこれらの方法を糾弾し、湿原自体の保全を要求しています。真に守るべきはこれらのシンボルそのものではなく、これらが生息する湿原の生態系なのです。自然を破壊することをやめ、自然を生かすことを考えなければなりません。
私たちは湿原のほか、湿原周辺の丘陵地にも保護地をつくり、森林の保全や荒廃地での植林にも力を入れています。緑豊かな丘陵地は湿原に水を送りこむ源であり、また別の生態系を持っているからです。およそ30
年前に釧路湿原周辺から姿を消してしまった鳥、シマフクロウが戻ってくる水辺の森林を夢見ながら、私たちのトラスト活動は続くことでしょう。
バードソン実行委員の皆さま、競技に参加された皆さま、また全国から募金くださった皆さまに重ねて感謝申し上げますとともに、今後とも応援をいただきたくお願い申し上げ、お礼の言葉とさせていただきます。
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